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第1962話
「あーもううるさいな! お前みたいに生意気な戦士が多いから、ちょっとお仕置きしてやっただけだろうが! 死合いに勝ってるのはオレたちなのに、毎回『それはズルい』だの『魔法なんて反則』だの、文句ばっかりつけやがって! 弱者は弱者らしく強者に従うのがヴァルハラのルールじゃねぇか!」
「ルールを都合よく解釈するな! 強者だからって何をしてもいいわけじゃないんだよ! つべこべ言わず、その人たちを解放しろ!」
ドラコと言い合いになっていると、集団の前の方からリーダーと思しき青年がやってきた。
「おい、さっきから何やってんだよ」
「イーサン!」
ドラコはこれ幸いとリーダー・イーサンに駆け寄り、こちらを指さして訴えた。
「イーサン、さっきからこいつがオレたちにクレームつけてくるんだよ! せっかく捕まえた戦利品を解放しろってうるさいんだ! どうにかしてくれ!」
「あ?」
イーサンとやらがこちらを見た。
ガラは悪そうだったが、彼が一番頭も回って強そうだった。腰には他の魔剣士と同様、鞘に入った剣を下げている。
その彼がニヤリとほくそ笑み、自分の唇を舐めた。
「へえ……? あんた、なかなかいい顔してるじゃねぇか。スタイルもいいし、面白い反応が見られそうだ」
「はっ……?」
「いいぜ、こいつらのことは解放してやるよ。ただし、あんたが身代わりになったらな」
「なっ……!?」
いきなり下衆な取引を持ちかけられ、頭が真っ白になった。
いい顔をしている? スタイルがいい? 身代わりになれ?
つまりそれは、俺にお前たちの慰み者になれって言っているのか……?
――ふざけるな……! 俺に触れていいのは兄上だけだ!
ますます頭に血が上り、小太刀の柄を握り締める。
これ以上侮辱されたら抜刀も厭わないつもりで、アクセルは唸るように聞いた。
「……お前ら、そもそも何の目的があって暴れているんだ? 魔法を使って無双して、一体何がしたいんだ?」
するとイーサンは、前髪を掻き上げてしれっとこう言った。
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