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第1965話※
いや、そんなことより本当に俺はこいつらに凌辱されるのか? 兄上以外の男に辱められないといけないのか? しかもこんな、戦士の風上にも置けない人間のクズに。
身体の痺れさえとれれば隙を見て逃げられるけど……でももし、もし延々と麻痺させられ続けたら……。
「ほら、さっさと連れて帰るぞ」
イーサンの声と共に、生き残った魔剣士がこちらの腕を引っ張ってくる。
何とか踏ん張ろうとしたのにさっぱり力が入らず、アクセルはずるずると引き摺られ、例の檻に入れられそうになった。
――い、嫌だ、兄上……!
動かない手足を必死にばたつかせていると、
「ぎゃッ!」
「ぐぇっ!」
すぐ近くで短い悲鳴が聞こえた。
ハッと顔を上げたら、夥しい血飛沫が自分の顔にも飛んできた。
先程まで自分を掴んでいた魔剣士の首が、綺麗に吹っ飛んでしまっている。
「うちの弟をどこに連れて行くつもりなのかな」
白いマントをはためかせ、鮮血が飛び散る中を兄は苛烈に舞っていた。
驚愕している魔剣士も問答無用で斬り伏せ、返り血を浴びるより先に次の魔剣士を倒している。
その圧倒的な強さと美しさに感動してしまい、こんな状況にもかかわらず自然と胸が高鳴ってしまった。
「く、この……!」
一人生き残ったイーサンが、魔法の武器を振り上げる。
だが彼が武器を振り下ろすより早く、兄はその腕をスパッと斬り落とした。
イーサンがよろけて尻餅をついたところで、兄が彼の鼻先に太刀を突き付けた。
「きみが魔剣士たちのリーダーかい?」
「ち、違う! オレは別にリーダーじゃねぇ! なりたいと思ったこともねぇ!」
「あ、そう。なんかリーダーっぽい雰囲気出してたからそうかなって思ったんだけど。まあ何でもいいや」
兄は斬り落とした腕ごと魔法の武器を拾い上げた。
「じゃあ、弟は返してもらうね。きみの仲間――ドラ、何とかって子にも言ったけど、あまり上位ランカーを舐めない方がいいよ。魔法での無双なんてそう長く続くものじゃない。今までやってきたことは全部自分たちに返ってくるから、覚悟しておきなさい」
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