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第1967話

「ん、ごほん……」  丁寧に身体を洗ってさっぱりしたところで、ようやく身体の痺れが収まってきた。  咳払いして声が出るかも確認してみたが、会話は問題なくできそうだ。よかった。 「ふぅ……」  浴室から出て動きやすいジャージに着替え、リビングで軽くストレッチを行う。ちょっと痺れが残っているところもあったものの、もう少し経てば完全に回復するだろう。  ――なんか……何もかも中途半端なところで終わってしまった感じがするな……。  魔剣士を倒せたのはいいけど、住宅街での救助活動も中途半端だし攫われそうになっていた中堅ランカーも完璧に救助できたとは言い難い。  居ても立ってもいられなくて思わず暴れてしまったけど、放置してしまったチェイニーはどうなったんだろう。泉には入れたんだろうか。後で様子を見に行かなくては。  ――それにしても、魔剣士って全部で何人いるんだろう……。  中堅ランカーを襲撃した魔剣士は、ドラコやイーサンを含めて八人くらいと思う。  あれが全員ならしばらく魔剣士の被害はないだろうけど、もし他にも仲間がいるとしたらどうだろう。報復のために動いてきたりはしないか。腹いせに、今度は上位ランカーの住宅街を襲うのではないだろうか。このまま家にいて本当に大丈夫なのか。  ――そもそもイーサンのやつ、「オレはリーダーじゃない」とか言ってたしな……。  口から出任せの言い訳だった可能性もあるが、仮にそれが本当だとしたら、魔剣士のリーダーである人物が他にいるということだ。  もしそんな人物がいるのなら、仲間が大勢やられたことを知って大激怒しそうである。  不安でそわそわしていると、タイミングよく兄が帰ってきた。 「ただいま。バルドル様に武器渡してきたよ。明日には結果がわかるって」 「そ、そうか……! よかった……」 「ただ、さっき掲示板に緊急のお知らせが貼り出されてたんだけどさ……今月の死合いは全部中止になるんだってよ」 「……えっ? 中止!?」  アクセルは目を剥いた。  決まっていた死合いが中止になるなんて、ヴァルハラに来て初めてのことだった。

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