1975 / 2195

第1975話

 アクセルはぺこりと頭を下げた。  ワンクッションあったが、一緒に来てくれることになってホッとした。バルドルのフォローのおかげだ。 「アクセルは可愛いよね。本当に理想の弟って感じ。フレインが溺愛するのもわかるな」  唐突にバルドルがそんなことを言ってきたので、少しはにかみながら答えた。 「ありがとうございます……。とはいえ、いくつになっても兄上に迷惑かけてばかりで、何で愛されてるのかわからなくなることも多いですけど」 「純粋に慕ってくれるだけで、兄からは弟が可愛く見えるものさ。それに、手がかかる子ほど可愛いとも言うし」  ねぇ、とわざとらしくホズに目を向けるバルドル。  ホズは不服そうに口を尖らせ、 「いや、俺は兄上にそんな迷惑かけてないだろう?」 「どうだろう? お前も一人にしておいたら危ないこと、結構あるよ。腕っ節はともかく、フォローしたくなる時も多いからなぁ」 「そんなことは……」 「ヴァルキリーの若い子を問答無用で切り捨てようとしたり、アクセルに意地悪してお願い聞いてやらなかったり。私からすると、もうちょっと穏便にできないのかと思っちゃうね」 「む……」  思い当たる節があるのか、バツが悪そうに黙ってしまった。  何だかじわじわと親しみが湧いて来て、アクセルはつい笑いそうになった。 「それじゃあ気を付けていっておいで。お守りもしっかり持って。くれぐれも無茶はしないようにね」  バルドルに送り出され、アクセルはホズと共に出発した。  世界樹(ユグドラシル)を通り、いつもの採掘場に行き、入口のひとつから洞窟内に入っていく。 「お前、ここの最深部に行ったことがあるのか?」  洞窟内を歩いている最中、ホズが尋ねてきた。彼は後ろからこちらを見張るように、三歩くらい下がってついてきていた。 「ええ……以前、ヤケクソ気味に行けるところまで行ってみようとして、そしたらいつの間にか明るい場所に出ていて……。今思えば、あそこまで行けたのは本当に奇跡でした」

ともだちにシェアしよう!