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第1975話
アクセルはぺこりと頭を下げた。
ワンクッションあったが、一緒に来てくれることになってホッとした。バルドルのフォローのおかげだ。
「アクセルは可愛いよね。本当に理想の弟って感じ。フレインが溺愛するのもわかるな」
唐突にバルドルがそんなことを言ってきたので、少しはにかみながら答えた。
「ありがとうございます……。とはいえ、いくつになっても兄上に迷惑かけてばかりで、何で愛されてるのかわからなくなることも多いですけど」
「純粋に慕ってくれるだけで、兄からは弟が可愛く見えるものさ。それに、手がかかる子ほど可愛いとも言うし」
ねぇ、とわざとらしくホズに目を向けるバルドル。
ホズは不服そうに口を尖らせ、
「いや、俺は兄上にそんな迷惑かけてないだろう?」
「どうだろう? お前も一人にしておいたら危ないこと、結構あるよ。腕っ節はともかく、フォローしたくなる時も多いからなぁ」
「そんなことは……」
「ヴァルキリーの若い子を問答無用で切り捨てようとしたり、アクセルに意地悪してお願い聞いてやらなかったり。私からすると、もうちょっと穏便にできないのかと思っちゃうね」
「む……」
思い当たる節があるのか、バツが悪そうに黙ってしまった。
何だかじわじわと親しみが湧いて来て、アクセルはつい笑いそうになった。
「それじゃあ気を付けていっておいで。お守りもしっかり持って。くれぐれも無茶はしないようにね」
バルドルに送り出され、アクセルはホズと共に出発した。
世界樹 を通り、いつもの採掘場に行き、入口のひとつから洞窟内に入っていく。
「お前、ここの最深部に行ったことがあるのか?」
洞窟内を歩いている最中、ホズが尋ねてきた。彼は後ろからこちらを見張るように、三歩くらい下がってついてきていた。
「ええ……以前、ヤケクソ気味に行けるところまで行ってみようとして、そしたらいつの間にか明るい場所に出ていて……。今思えば、あそこまで行けたのは本当に奇跡でした」
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