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第1980話
そう言われると、少し迷いが生じる。
ラグナロクは本当に大きな戦争で、様々な犠牲が出たのだ。人のみならず、神々も建物も、たくさん壊された。バルドルも黄泉の国に落ちたし、直後にホズも落とされた。
かくいうアクセルも、透ノ国の石板を破壊したことで一度消滅している。が、兄・フレインが頑張ってくれたおかげで復活できたのだ。復活できなかったら、危うく死に別れるところだった。
――さすがにそこまでの規模にはならない……と信じたいけど、争いに犠牲はつきものだからな……。
戦うのは戦士 の性分だけど、その引き換えが親しい人の消失だったら「よし、戦争だ」と軽い気持ちで宣戦布告するわけにもいくまい。
復活できない人も出てくるだろうし(というか、アロイスはまだ復活できていない)、万が一兄・フレインが戦死してしまったら自分も生きていけないだろう。
とはいえ、ヴァルキリーたちと争わない限り、ヴァルハラはいつまで経っても今のままだ。それはそれで困る。
――兄上だったら喜んで戦いそうだが……実際のところ、どう考えているんだろう。
帰ったら兄と相談してみるか。兄が戦う気満々なら、自分も一緒に戦う所存である。同じ戦場に立つことは、生前からの夢だ。
ただ、ヴァルキリーの戦力は未知数である。気楽に戦って勝てる相手でもなかろう。
兄がヴァルキリーと戦ってボロボロになったこともあるし……万が一兄が戦死してしまったらと思うと、背筋がぞっとしてくるというか……。
「おい、ボーッとするな」
「ハッ……!?」
いきなりホズにガッと腕を掴まれ、岩陰に引きずり込まれてしまう。
気付けば、先程まで自分が立っていたところがガーディアンのレーザーランプで照らされていた。あのまま直進していたら、危うく見つかるところだった。
ガーディアンは、こちらに気付くことなくそのままのしのし通過していった。
「……行ったか」
「みたいです……」
「ならいいが……お前ってヤツはこんな時に何を考えているんだ。まったく、危なっかしくて敵わんぞ」
「す、すみません……」
ホズに叱られ、力なく項垂れる。
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