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第1983話

 結晶がなくなった途端、壁だったところからぽっかりと新しい道が現れた。  キラキラした結晶に覆われた道で、洞窟とは思えないほど明るい。足下もしっかり見える。 「やはりな。これで更に奥に進めるようになった」  ホズがしたり顔で剣を納め、こちらを一瞥してきた。 「行くぞ。あまり遅くなると兄上が心配してしまう」 「は、はい……」  ホズが先に進んでしまったので、アクセルも彼を追いかけた。  ――ホズ様、意外と大胆だな。いきなり魔石を破壊するとは思わなかった……。  彼はもっと慎重なタイプだと思っていたのだが、いざという時は行動力があるらしい。  周囲に気を配りながら奥に進んで行くと、またもやキラキラした空洞に出た。  今度は先程のただっ広い空間とは違い、中央に巨大な木が生えていた。形そのものは大木だが、幹や枝、葉っぱの一枚に至るまで全て結晶でできているみたいだった。目に眩しい。  大木の周りは透明な泉で囲まれており、波一つなく水面が鏡のようになっていた。 「ええと、あの木が魔力の供給源なんですかね……?」 「そのようだな」  ホズが例のコンパスを取り出す。目的のものが近いのか、コンパスの針が明るく輝き、くるくると高速で回り続けていた。 「目的の供給源は見つけたが、あんな大木だとは思わなかったな。さて、どうしたものか」 「とりあえず、あっちまで行ってみましょう」  そう言って泉に右足を踏み出した途端、ジュワッ……と嫌な音が聞こえてきた。  本能的な危機感を覚えて急いで泉から離れたが、濡れた足元に目を落としたらとんでもないことが発覚した。 「溶けてる……!?」  革のブーツから白い煙が立ち上り、ぶすぶす変な音を立てている。  どうやらこの泉はただの水ではなく、強力な酸になっているみたいだ。  ――少し濡れただけでこれって……向こうに辿り着く頃には全身大火傷になってるんじゃ……。  全身大火傷で済むならまだいいが、酸に耐えられず死んでしまったらどうしよう。泉の中で死んだら身体が溶けてしまうから、死体が残らない。ヴァルハラに戻っても蘇生できなくなってしまう。

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