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第1984話
ぞっとしてホズに目をやったら、彼も首を傾けて顎に手をやっていた。
「……そう簡単には近付けないということか。目的の物を目の前にして、何もできないのはシャクだな」
「筏みたいなものを作れれば……と思ったんですが、この泉が何でも溶かしてしまうなら筏も溶かされてしまうかもしれませんね……。そもそも、ここには筏の材料なんてありませんし」
「いや、筏というのはいい線いっているぞ。もっとも普通の木で作ってもアウトだろうから、溶けない材料を使う必要があるが」
「溶けない材料って……」
「泉の中を見てみろ」
言われた通り、落ちないように縁から泉の底を覗いてみる。
すると、泉の底に洞窟の壁と同じような結晶が沈んでいるのが見えた。意外と底も浅く、目測だが一メートルくらいしか水深がないのではないかと思われる。
「あれはこの壁の結晶……? ということは、結晶を大量に採掘して泉に放り込めば足場が出来上がるってことですか……?」
「そういうことだ。結晶が沈んでしまったら筏は無理だが、水深がこの程度なら大きめの結晶を放り込めば足場にはなるだろう」
「なるほど……! じゃあ、今すぐ結晶を採掘しましょう。何なら橋みたいに向こう側に渡しちゃってもいいですし」
最深部で作業するのは泉が近くて危険なので、ひとつ手前の大空洞に戻って結晶を切り出すことにした。
結晶そのものは意外と脆く、小太刀でスパッと切れ込みを入れただけで思う通りの形に切り出せた。もっと重労働になるかと思っていたけど、これなら楽勝だ。
丸太よろしく大量の結晶を積み上げたところで、アクセルは額の汗を拭った。
「こんなもんですかね?」
「ふむ、ひとまずこれを泉に運んでくるか。あとどれくらい必要かも気になるしな」
その時、またもやゴゴゴ……と洞窟全体が揺れ始めた。
壁の結晶にピシッとヒビが入ったかと思ったら、バキバキとそこが割れ、結晶を押し退けて中から巨大な亀が現れた。
「えええ!? 何だこいつ!?」
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