1985 / 2192
第1985話
今まで見た亀とは比べ物にならないほど大きい。全長三メートル近くあり、甲羅だけでも二メートルを超えていた。体重も三〇〇キロ以上はありそうだ。
甲羅は結晶と同じくキラキラ輝いており、同成分でできていると思われる。
――ちょっ……こんなヤツが住んでるなんて聞いてないんだが!?
これは倒さなきゃいけないのか? そもそもコイツは何物なんだ? 新種の化け物か?
でも亀と戦ったことなんてないし、どうやって倒すのかもわからない。
困ってホズに目をやったら、ホズも戸惑ったように亀を見ていた。どうやら彼にとっても未知の生き物であるようだ。
「グァ……」
「……!」
亀はこちらを見るなり、のっしのっしと近づいてきた。動きはかなり遅く、敵意もなさそうだった。
距離を取って向こうの出方を窺っていたのだが、亀は切り出した結晶に近づくと少し首を伸ばしてバリムシャと食べ始めた。
「……ええ? それ餌なのか?」
「みたいだな。何だかよくわからん生体だ」
ホズも呆れていたが、下手に手を出して敵対されても嫌だったのか、剣を下ろして亀を観察していた。
余程お腹が空いていたのか、亀は結晶をどんどん平らげていく。かなりたくさん切り出したはずだったのに、気付いたら結晶は残り半分になってしまっていた。
「あの……これどうしましょう? このままじゃ泉を渡れません」
「……そうだな。この亀が泳いで渡らせてくれるならともかく、そもそも酸に強いのかもわからん」
「溶けてしまったら可哀想ですもんね……。悔しいですけど、やっぱり一度引き返して泉を渡る小道具を用意してきた方がいいでしょうか」
「お前のヤドリギに、枝を伸ばしてもらうことはできないか? それを渡っていくのが一番手っ取り早い気がするが」
「え、ええと……どうでしょう? 一応やってみますけど、このヤドリギは俺の言うことを聞いてくれないことも多くて……」
そう答えた時、亀が一声「グア」と鳴いた。
結晶を食べ尽くして満足したのか、今度はじっとこちらに視線を送ってくる。
ともだちにシェアしよう!