1988 / 2193

第1988話

 そんな摩訶不思議な亀がアース神族の世界(アースガルズ)に存在していたのか。ホズも知らなかったようだし、まだまだ神々の世界は未知の部分が多い。 「グァァ~」  木をおおかた食い尽くして満足したのか、亀は大きくあくびをした。  そして再びのろのろと泉に向かい、ザブンと飛び込んだ。 「あっ、ちょっと待ってくれ」  置き去りにされたら帰れなくなる。アクセルたちは急いで亀の背中に飛び乗った。  そのまますいすいと泉を泳いで渡り、元の場所に戻って最初の大空洞まで引き返す。 「ンガ……」  亀は意味深にこちらを一瞥すると、のっしのっしと壁に貼りついてそのまま動かなくなった。  しばらく待ってみたのだがそれっきり反応がなく、シーン……と洞窟内が静まり返っている。 「……。……あの……もしもし? きみは結局何物なんだ?」  呼びかけても反応はゼロ。それどころか周囲の結晶と甲羅が徐々に一体化していき、壁に溶け込んで結晶そのものになってしまった。 「ええと……なんか元に戻ってません?」 「……そうだな」 「てことはこの亀、結局起きてご飯食べて寝ただけってことに……」 「そうかもしれん。平和な亀だ」  ホズも呆れてしまっているようだ。  ――亀にとっては、たまたま起きた時に俺たちがいただけだったのかな……。怪物との戦闘にならなかっただけマシかもしれないけど……。  仕方なくアクセルは、軽く咳払いして話を戻した。 「そ、それで、肝心の魔力の供給源はちゃんと破壊できたんですかね?」 「できたみたいだぞ」  ホズがコンパスを見せてくれる。光って回転していた針は今やピタリと動きを止め、どことも言えない場所を指していた。 「もう反応はない。おそらく目的は達成したんだろう。安心してよさそうだ」 「よかった……。これでヴァルキリーや魔剣士たちに悩まされることはなくなるんですね」 「……魔剣士はどうか知らんが、ヴァルキリーどもはな。供給源を破壊されたら、別の場所を供給源に設定するだけのような気もするが」

ともだちにシェアしよう!