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第1992話

 ――そのくせ、採ってきた食料は平等に再分配されちゃうしな……。救助活動とはいえ、苦労に見合わないか。  個人的な狩りなら捕った大物は全部自分のものにできるのだから、大食漢の兄にとってはやや物足りない結果だったのだろう。  仕方がないとはいえ、そりゃあ不満にもなるわな……と同情したくなる。  ――早くヴァルハラを立て直したいな。市場さえ再開できれば、食糧事情も元に戻るだろうし。  そんなことを考えながら、アクセルは食事を続けた。  夕食を終え、食器を洗い、風呂に入って寝る前のストレッチをしたところでベッドに入る。明日も狩りをするのなら、早めに寝て疲れをとらなくては……。 「……ねえ」  そう思っていたら、唐突に兄がこちらのベッドによじ登ってきた。当たり前に寝ようとしていたので、よくも悪くもドキッとした。 「お前はさっきのご飯で足りた?」 「え? ああ、それはまあ……。俺は兄上ほど大食いじゃないから……」  それに、バルドルのところで軽食も食べてきたからイノシシのシチュー一杯で十分だったのだ。 「そっか。いいなぁ……お前は。ちょっとの食事で満足できて」 「普通量だと思うけどな……。別に兄上、足りなかったらおかわりしてもよかったんだぞ?」 「いつもならそうするけど、今それをやったらすぐ食料が枯渇しちゃうじゃない。そしたらまた大物をいっぱい狩ってこなきゃいけなくなるんだよ? そう思って自重してたの」 「そ、そうか……そうだよな……」  でもそれと、ベッドに入ってくることと何の関係が……と訝しんでいると、 「というわけで、代わりにお前を食べたいんだけど、いい?」  とんでもないことを言われ、思わず目を剝いてしまった。 「ええ!? 代わりにって何だよ? 俺は食べ物じゃないんだが!?」 「性欲が満たされれば食欲も落ち着くかなと思って。このままじゃ物足りなくて眠れないし、代わりに栄養になってくれる?」 「何だその理屈は!? 俺を抱いたってそっちの栄養にはならないだろ!」 「まあいいじゃない。お前も私と離れて仕事してきたんだし、ご褒美ということで」 「ちょっ……あ!」

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