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第2007話
マットやシーツを魔法のドラムで洗濯するのは恥ずかしいと言ったからか、ちゃんと家で洗って干すようにしてくれたらしい。
こういう細やかな気遣いがあるから、強引なことをされても何だかんだ許してしまうのだ。
ほんのりと甘酸っぱい気持ちを抱きつつ、急いで食事をして山に向かう。
念のためピピに声をかけ、一緒に山歩きをすることになった。
「兄上は昨日と同様、食糧確保をしてると思うんだ。どこにいるかわかるか?」
「ぴー……」
ピピがパタパタと耳を動かしている。
わずかな音を拾って兄の居場所を特定しようとしているが、さすがのピピも何の手掛かりもナシだと正確な場所はわからないみたいだった。
「……まあそうだよな。いいよ、歩いていればいずれ見つかるだろう。何か気付いたことがあったら教えてくれ」
山の麓は比較的静かで、狩りが行われている形跡はなかった。兄がいるとしたらもっと奥の方だろう。大物を狙っているはずだから、注意して進まなくては。
ピピを引き連れ、更に山の奥に入っていく。
歩いて進むにつれ、少しずつ空気が硬くなっていくのを感じた。山の奥は大抵こんな感じだが、今日はなんだかいつもと少し雰囲気が違う気がした。
――おかしいな、静かすぎる……。
山の奥ならもう少しこう……獣の気配を感じてもおかしくない。そうでなくても狩りをしている兄やその仲間はいるはずだし、木々のざわめきしか聞こえないのは妙だ。
「……ピピ、何か聞こえないか?」
「ぴー……」
一応確認してみたのだが、ピピも訝しげに首をかしげているだけだった。獣の足音や武器の音も聞こえないらしい。自分の耳だけがおかしくなっているわけではないようだ。
――何だろう……とてつもなく嫌な予感がする……。
全身に緊張が走り、アクセルは小太刀の柄を固く握り締めた。
この手の気配を感じた時、先に進むとロクなことがない。それは今までの経験上、嫌というほど思い知っている。その結果、兄や周りの人に迷惑をかけてしまうことも。
でも……でも……それなら兄は一体どこへ行ってしまったのだろう。
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