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第2011話

「そう。謎のメモを残したのも、お前を山に誘い込んで罠にかけるためだったのかもしれない。あのまま進んでいたらマズかったかもよ」 「え……そんな……誰が何のために……?」 「それは私にもわからない。でもお前、本当に気をつけなさいよ? 一度罠を回避したからって、次も回避できるとは限らないんだ。お守りは常に持ち歩いて、少しでも怪しいと思ったらそこには近づかないこと。いいね?」 「う……うん……」  すごい圧で言われたので、アクセルは頷くしかなかった。  が、心の中では密かに兄に反論してしまう。  ――いくら気を付けていても、今朝のメモみたいに『兄上からだ』と思い込んじゃっていたら回避しようがないんだが……。  あの時はピピが止めてくれたから助かったが、自分一人だったら奥に進んでいたとも限らない。  常に兄と二人で行動できるわけではないし、どこまで回避できるのか一抹の不安がよぎる。  というか、本当にあのメモは何だったんだ? 一体誰の仕業だったんだ?  仮にこちらを罠に嵌めたかったとして、目的は何だったのだろう……? 「はい、もう悩むのは終わりだよ」 「いてっ……」  気付けのように兄がパチン、と頬を叩いてくる。  アクセルが目を白黒させていると、兄はしたり顔でこう言ってきた。 「わからないことをこの場でグダグダ考えていてもしょうがない。考えたいなら情報を集める、そうでないなら仕事に集中する。でないと時間がもったいないからね」 「そ、そうだな……」 「さ、早くお昼ご飯にしよう。朝から働いてお腹空いちゃった」  兄は在り合わせの食材でサンドイッチを作り、それをモリモリ食べ始めた。  仕方なくアクセルも軽くパンを焼き、そこにバターを塗って簡単な昼食をとった。  ――兄上はすごいな……。物事の切り替えが早いというか……俺にはまだ真似できそうにない。  とはいえ、わからないことをわからないまま放置しておくのも気持ち悪い。また同じようなことが起きて、今度こそ罠にかかるとも限らないし。

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