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第2013話

 いつぞや誰かにもらった差し入れだが、言われてみれば最近はとんと酒を飲んでいない。  アクセル自身、勧められれば付き合う程度にしか飲まないので、ワインにはさほど興味がなかった。  なのでこういう嗜好品は兄の担当なのだが、最近は兄が飲んでいるところもあまり見ていない。  そもそも今は食料が不足しているから、酒に合うツマミを用意するのも大変だし……。 「……って兄上、もしやそれを口実にバルドル様のところで飲み食いするつもりじゃ……」 「いやいや、そんなことはないよ。バルドル様に夕食をご馳走してもらおうなんて考えてないよ」  ……考えているな、これは。  やや呆れつつ、アクセルは戸締まりをしてバルドルのところに向かった。  世界樹(ユグドラシル)を通ってアース神族の世界(アースガルズ)に辿り着き、目的の屋敷に歩いていく。  その道中での出来事だった。 「っ……!」  突然耳鳴りに襲われ、頭が締め付けられるように痛んだ。正確には耳鳴りではなく、高音を発する生き物の鳴き声が聞こえた。  割れるような頭痛にくらりと目眩がして、足元がもつれてその場で倒れそうになる。 「う……」  しばらくしたら謎の耳鳴りは止み、頭の痛みもなくなった。  それでも頭痛の余韻がひどく、くらくらする自分の額を押さえる。 「アクセル、大丈夫かい?」  兄がこちらに肩を貸してくれた。  アクセルは兄の肩に凭れかかりつつ、めまいが治まるのを待った。 「……一応、大丈夫だ。兄上は何ともないのか?」 「うーん……ちょっと耳がガンガンしたけど、我慢できないほどではないかな。でも今の鳴き声? 一体何だったんだろう」 「……わからない。アース神族の世界(アースガルズ)ではヴァルハラ以上に不思議なことが起きるからな……俺たちじゃ何とも」  そう言いかけた時、道の先から幼い子供の声が聞こえてきた。 「いいなぁ……なかよし兄弟。すっごくうらやましい」 「……!?」  ハッと顔を上げたら、少し離れたところに一人の少女が立っていた。

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