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第2016話

「……ちょ、兄上」  過激な物言いに、耳元で窘める。  大袈裟に表現して諦めさせるつもりなんだろうけど、あまり子供に話すべき内容ではないように思う。  案の定メリナも不満げに口を尖らせ、兄を睨みつけた。 「……そういうのじゃないの。わたしはもっとちがうおとなのあそびがしたい」 「そうかい。じゃあこの話はなかったことにしよう。私たちは大人の遊びなんてしたくないからね」 「だめ!」  思った以上に甲高い声が、鼓膜にキーンと響いた。少し頭が痛くなった。 「わたしとあそばないなんてゆるさない。わたしだけあそべないなんて、ぜったいいや」 「嫌と言われても、私たちはきみと遊んでいる暇はないんだよ。そんなに遊びたいなら、遊んでくれそうな他の神様に頼んだら?」 「いやぁっ!」  見た目通り子供っぽく駄々をこねられ、アクセルは辟易した。彼女の悲鳴が耳と頭に響き、余計にくらくらしてきた。 「ほかのかみさまは、みんなわたしにいじわるするの。わたしをとじこめて、ずっとひとりぼっちにしておくの。そんなの、もういや!」 「……そうかい」 「おにいちゃんたちは、すかしのくににもよくくるでしょ。エインヘリヤルだからかみさまともすこしちがう。わたしのあそびあいてにはちょうどいいの」  そんな勝手に決められても……という気分なのだが、神族ではない者の中で透ノ国に頻繁に訪れている者など、自分たちくらいしかいない。  地下研究所を探索したり最高傑作を始末しているうちに、メリナに目をつけられたのだろう……きっと。  ――というかこの子、透ノ国に閉じ込められていたのか……?  相変わらず要領を得ない話だが、彼女の発言を繋ぎ合わせると、どうもそんな感じがしてくる。  透ノ国は、一度閉じ込められると自力で脱出するのが難しい。他の仲間もいないので、暇を持て余しながらずっと一人で過ごさないといけない。  そんな環境に長いこと身を置いていたのなら、「誰かと遊びたい!」という欲求が高まってしまうのも無理はないだろう。  まあ、だからといって彼女のいう「大人の遊び」に付き合ってやる道理はないのだが……。

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