2016 / 2207
第2016話
「……ちょ、兄上」
過激な物言いに、耳元で窘める。
大袈裟に表現して諦めさせるつもりなんだろうけど、あまり子供に話すべき内容ではないように思う。
案の定メリナも不満げに口を尖らせ、兄を睨みつけた。
「……そういうのじゃないの。わたしはもっとちがうおとなのあそびがしたい」
「そうかい。じゃあこの話はなかったことにしよう。私たちは大人の遊びなんてしたくないからね」
「だめ!」
思った以上に甲高い声が、鼓膜にキーンと響いた。少し頭が痛くなった。
「わたしとあそばないなんてゆるさない。わたしだけあそべないなんて、ぜったいいや」
「嫌と言われても、私たちはきみと遊んでいる暇はないんだよ。そんなに遊びたいなら、遊んでくれそうな他の神様に頼んだら?」
「いやぁっ!」
見た目通り子供っぽく駄々をこねられ、アクセルは辟易した。彼女の悲鳴が耳と頭に響き、余計にくらくらしてきた。
「ほかのかみさまは、みんなわたしにいじわるするの。わたしをとじこめて、ずっとひとりぼっちにしておくの。そんなの、もういや!」
「……そうかい」
「おにいちゃんたちは、すかしのくににもよくくるでしょ。エインヘリヤルだからかみさまともすこしちがう。わたしのあそびあいてにはちょうどいいの」
そんな勝手に決められても……という気分なのだが、神族ではない者の中で透ノ国に頻繁に訪れている者など、自分たちくらいしかいない。
地下研究所を探索したり最高傑作を始末しているうちに、メリナに目をつけられたのだろう……きっと。
――というかこの子、透ノ国に閉じ込められていたのか……?
相変わらず要領を得ない話だが、彼女の発言を繋ぎ合わせると、どうもそんな感じがしてくる。
透ノ国は、一度閉じ込められると自力で脱出するのが難しい。他の仲間もいないので、暇を持て余しながらずっと一人で過ごさないといけない。
そんな環境に長いこと身を置いていたのなら、「誰かと遊びたい!」という欲求が高まってしまうのも無理はないだろう。
まあ、だからといって彼女のいう「大人の遊び」に付き合ってやる道理はないのだが……。
ともだちにシェアしよう!