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第2020話
すると、今度はホズが小さく舌打ちをしてきた。
「……あの小娘、透ノ国でそんな知恵まで身につけやがったのか。他人になりすますなど、以前のアイツでは考えられないことだったが」
「そうなんですか……?」
「アイツは見た目も中身も子供だと言っただろう? だから以前はたいした知恵もなかったんだ。何か仕掛けようとしても、すぐに見破られてしまうのがほとんどだった。誰かのフリをして手紙を書くなど、考えられなかった」
「そんな……」
「それが、お前を騙すほどの策を身につけていたんだろう? それもこれも、巫女が余計なことを吹き込んだせいだ。まったく……予言の巫女め、消滅してからも迷惑ばかりかけおって」
それは全面的に同意である。
元々巫女は生前もロクなことをしていなかったけれど、ラグナロク後も悪影響が残っているのは迷惑千万だ。
思わず深く溜息をついたら、ホズはこちらを眺めて言った。
「お前たち、目をつけられているようだから本当に気をつけろよ。アイツは以前の小娘とは違う。性格はそのままだが、余計な悪知恵をつけているようだからな。少しでも怪しいと思ったら、変なことに関わるのは極力避けるべきだ」
「は、はい……肝に銘じます」
「でも、気を付けるだけじゃキリがないよね。こっちがいくら注意をしていても、メリナはかまわずちょっかいを出してくるし」
と、バルドルが首を捻る。
「今はきみたちに興味が向いているけど、私たちもいつ被害を受けるとも限らない。いっそのこと、どこか違う場所に封印した方がいいかもな。透ノ国じゃなく、もっと厳重で自分からは出てこられないような場所に」
「バルドル様、何かあてがあるんですか?」
「うん……まあ、心当たりがないこともない。詳しく書物を調べないといけないから、ちょっと席を外すよ。こういうのはなるべく早い方がいいだろう」
ガタン、とバルドルが席を立ったので、アクセルもつられて腰を浮かせた。
「あの、お手伝いしましょうか?」
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