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第2021話

「いや、大丈夫。我々の書物は神々の言語で書かれているからね、きみたちじゃ読めないよ。それよりきみたちは、そこのご馳走でも食べてゆっくりしてて」 「え……。さすがにそれは悪いのでは……?」  食堂のテーブルには、ディナーにふさわしい食事が並べられている。まだ一切手をつけられていない。  だけど突発的に訪ねたのでバルドルとホズの分しか用意されていないし、それを自分たちが食べてしまうのはいくら何でもマズいのではないか。  だがバルドルは、穏やかに微笑んでこう言った。 「いいんだ。今ヴァルハラでは魔剣士のやらかしで、食料が足りないんでしょう? せめてここではお腹いっぱい食べて、また明日から元気に活動して欲しいな」 「は、はあ……ですが……」  様子を窺うようにホズにも目をやったのだが、彼は腕組みをしているだけで特に反対してこなかった。 「というわけで、きみたちはここで待ってて。手伝って欲しいことがあったらすぐに言うから」  そういってバルドルは、ホズを連れて食堂を出て行ってしまった。  残されたアクセルは、テーブルの上を見つめて言った。 「い、いいのかなぁ……本当に」 「いいんじゃないの? バルドル様が食べてって言ってくれたんだ、神様の施しを断る方が失礼になるよ」  兄はあまり遠慮することなく、ナイフとフォークを手にしている。 「それに、最初はご馳走してもらおうと思ってたし。ある意味、すごく都合のいい展開だよ」 「……いや、ご馳走してもらおうとしてたのは兄上だけなのでは」 「細かいこと言わないの。どうしても悪いと思うなら、これ食べた後に新しく食事を作ってあげればいいさ。今の時点で私たちにできることは、それくらいしかないからね」 「……まあ、それもそうだな」  兄がステーキを口に運び始めたので、アクセルも遠慮がちにパンを千切った。焼きたてだったらしく、ふわふわでとても美味しかった。 「それにしてもバルドル様、本当に親切だよな……。他の戦士にもこういう対応してるんだろうか」

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