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第2024話

「結論からいうと、メリナはこの中に封印してあげるといいと思うんだ」  バルドルがホズの持つ鏡を指し示す。ホズは黙って鏡をダイニングテーブルに置いた。  アクセルは身を乗り出して鏡を覗き込んだ。いつもの自分の顔が見返してきた。 「ええと……これは鏡、ですよね? この中というのは……?」 「鏡の中の世界ってことさ。正確には、幻術だけでできた虚構の世界だね」 「えっ、そんな世界があるんですか?」 「あるよ。昔から、鏡の中に何かを封印するのはよくある話だし」  そう言って、バルドルはダイニングテーブルの席に着いた。 「この鏡に封印しておけば、少なくとも十年くらいは無事に過ごせるよ。十年ごとに封印が弱まるからその度に魔力を注ぎ込まないといけないけど……その手間さえ惜しまなければ、封印が解けることはない。一応、半永久的に相手を封印できる大掛かりな術もあるにはあるけど、それは準備に時間がかかりすぎるからね。なので一番手っ取り早いのはこれだって結論に至ったんだ」 「そうなんですか。じゃあ……」 「ただ、ひとつ問題がある」  ホズが割り込むように話に入ってきた。 「あの小娘のことだ、そう簡単に封印の罠にはかかってくれないだろう。今まで何度も封印されそうになったところを逃げてきたわけだからな、余程の作戦を用意しないと難しいはずだ」 「……そんなに手強いんですか、メリナは」 「ああ。子供ならではの敏感さで、容易に罠を見破ってしまう。しかも今は大人の悪知恵を身に着けているだろう? おいそれとこちらの作戦には乗ってくれないと思う」 「そう、ですか……」  やはり、そう簡単にはいかないようだ。道具を用意したから全て解決……というのはさすがに甘かったらしい。  ――まあ、そんな簡単に封印できるんだったら最初からそうしてるだろうしな……。  気を取り直し、アクセルは別のことを聞いてみた。 「ちなみに……その鏡に対象を封印する時は、対象を鏡に写してやればいいんですか?」

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