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第2027話

「大丈夫だよ」  一人で考え込んでいたら、兄がこちらの手を握ってきた。こちらの不安を全て見透かしたかのように、穏やかに微笑んでくる。 「万が一お前に何かあったら、私が何とかしてあげる。お前の魂がどこかに飛んでっちゃったら、地の果てまで追いかけて捕まえてあげる。存在が消滅しちゃっても、オーディン様に泣きついて復活させてもらう。今までだってそうだったじゃない」 「兄上……」 「だからお前も、私に何かあった時は全力で助けてね。変な迷いは捨てて、私のために頑張るんだよ。メリナに身体を乗っ取られるのは私かもしれないんだから。その時は遠慮なく斬り刻んで、棺を貸してもらうんだ。いいね?」 「あ……ああ、わかった」  そう釘を刺され、アクセルは少し吹っ切れた。  ――そうだな……。兄上なら全て何とかしてくれるはずだ。  信頼する兄が隣にいてくれる安心感。兄がいてくれれば、何が起きても大丈夫だと思える。  だから今は、目の前のことに集中しよう。これが解決しても、やるべき仕事はたくさんあるのだ。余計な不安を抱えている場合じゃない。  悪戯好きの迷惑小娘なんて、さっさと封印してしまうのが一番である。  ヴァルハラの自宅に戻ったら、とっくに寝る時間を過ぎていた。  アクセルは軽く汗を流して就寝着に着替え、ベッドに入った。 「私はリビングで寝ずの番をしているよ。寝ている間に忍び込んでこられても困るからね」 「わかった……しばらくは交代で寝ずの番だな。なるべく早く起きるから、そしたら今度は兄上が寝てくれ」 「ありがとう。それじゃ、おやすみ」  軽く頬にキスして、兄は寝室を出て行った。  ――どうせなら、リビングで寝た方がよかったかな……。  いつもの習慣でベッドに入ってしまったけど、寝ずの番をするなら同じ空間にいた方が目につきやすい。明日はリビングに簡易ベッドを運び込んでおくか……。  そんなことを考えていたら、あっという間に眠ってしまった。  夢を見ないほど深く、ぐっすりした眠りだった。

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