2027 / 2203
第2027話
「大丈夫だよ」
一人で考え込んでいたら、兄がこちらの手を握ってきた。こちらの不安を全て見透かしたかのように、穏やかに微笑んでくる。
「万が一お前に何かあったら、私が何とかしてあげる。お前の魂がどこかに飛んでっちゃったら、地の果てまで追いかけて捕まえてあげる。存在が消滅しちゃっても、オーディン様に泣きついて復活させてもらう。今までだってそうだったじゃない」
「兄上……」
「だからお前も、私に何かあった時は全力で助けてね。変な迷いは捨てて、私のために頑張るんだよ。メリナに身体を乗っ取られるのは私かもしれないんだから。その時は遠慮なく斬り刻んで、棺を貸してもらうんだ。いいね?」
「あ……ああ、わかった」
そう釘を刺され、アクセルは少し吹っ切れた。
――そうだな……。兄上なら全て何とかしてくれるはずだ。
信頼する兄が隣にいてくれる安心感。兄がいてくれれば、何が起きても大丈夫だと思える。
だから今は、目の前のことに集中しよう。これが解決しても、やるべき仕事はたくさんあるのだ。余計な不安を抱えている場合じゃない。
悪戯好きの迷惑小娘なんて、さっさと封印してしまうのが一番である。
ヴァルハラの自宅に戻ったら、とっくに寝る時間を過ぎていた。
アクセルは軽く汗を流して就寝着に着替え、ベッドに入った。
「私はリビングで寝ずの番をしているよ。寝ている間に忍び込んでこられても困るからね」
「わかった……しばらくは交代で寝ずの番だな。なるべく早く起きるから、そしたら今度は兄上が寝てくれ」
「ありがとう。それじゃ、おやすみ」
軽く頬にキスして、兄は寝室を出て行った。
――どうせなら、リビングで寝た方がよかったかな……。
いつもの習慣でベッドに入ってしまったけど、寝ずの番をするなら同じ空間にいた方が目につきやすい。明日はリビングに簡易ベッドを運び込んでおくか……。
そんなことを考えていたら、あっという間に眠ってしまった。
夢を見ないほど深く、ぐっすりした眠りだった。
ともだちにシェアしよう!