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第2030話

 兄を傷つけずに上手く正体を炙り出す方法……何かないのか、何か……。  ――あ、そうだ……!  あることを思いつき、アクセルは口を開いた。 「じゃあ兄上、今日は庭で鍛錬しないか? 俺も久しぶりに兄上とトレーニングしたいんだ」 「えっ……?」 「ここのところ、仕事や雑用で本格的な鍛錬をしてこなかったからな。ちゃんと鍛錬しないと身体が鈍ってしまう」 「いや、それは……」 「兄上だって、ランクが落ちたら困るだろ? しばらく死合いはないけど、鍛錬を怠るのは戦士(エインヘリヤル)失格だ。こういう時こそ、しっかり鍛錬しないとな」 「…………」  すると兄はやや戸惑ったように目を逸らし、もどかしげにこう言ってきた。 「鍛錬じゃなくて、もっと違う遊びがいい……」 「兄上にとっては、鍛錬も遊びみたいなものだろ。いいからやってみよう」 「うう……」  アクセルに引っ張られ、渋々庭に出る兄。  そんな兄を見て、アクセルは心の底から悲しく思った。  ――これはもう、十中八九決まりだな……。  兄が鍛錬を嫌がるはずがない。仕事はサボっても、それだけは絶対にあり得ない。  今までのことを総合して考えても、兄はメリナに乗っ取られていると考えてよさそうだ。  ……本当は、嘘であって欲しかったが。 「……兄上」  アクセルはスッ……と二振りの小太刀を抜き放った。  そしていつものように構え、戦闘態勢をとった。 「構えてくれ」 「えっ……!?」 「久々に真剣での勝負だ。兄上、こういうの好きだろう? さあ、思いっきり斬り合おう」  すると兄は目に見えて動揺してしまい、困ったように目を泳がせた。 「いや、あの……鍛錬するんじゃないの? 鍛錬って、走ったり身体を解したりすることだよね……?」 「……真剣での斬り合いも、立派な鍛錬だ。さあ、構えろ」 「でも、本物の武器で斬り合うのは危ないんじゃ……」 「泉や棺に入れば復活できる。さあ、早く!」 「う……」 「できないなんて言わないよな? ランキング三位のトップランカーが!」 「…………」

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