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第2037話
まあ持ってきてくれたならありがたく使わせてもらうか……と、アクセルは丁重に兄の遺体を運び込んだ。かなり深く首が切れていたので、頭と胴体が離れそうになっていた。
こんな状態の兄を棺に入れなければいけないのも、何だか気分が落ち込んでしまう。
「……はぁ」
棺そのものを寝室まで運び、念のためドアに鍵をかけておく。
そして血で汚れた服を洗濯に出し、鍛錬用のジャージに着替えてキッチンに入った。食料庫をチェックしつつ、残っている野菜や豆を掻き集める。材料的には心もとなかったが、今は全体的に食糧不足なので許してもらおう。
野菜を刻み、大鍋に全部投入し、じっくり煮込んで豆のスープを作る。
そして完成したスープを持って、ある場所を訪問した。
「アロイス、いるか?」
山の麓の木こり小屋をノックしてみる。
すると中からいつものドスン、バタン、という音が聞こえてきて、数秒後バターンと勢いよくドアが開いた。
「おお、アクセル久しぶりだな! なんか住宅街が大変なことになってたけど、お前んちは無事そうで安心したぜ!」
「アロイス……」
あけすけな笑顔を久しぶりに見た。間違いなくアロイス本人だった。
もう二度と会えないかも……と思っていただけに、その場で泣きそうになった。
「よかった……。ちゃんと復活できたんだな……」
「おう、何とかな。何か死合いが始まっていきなり記憶が吹っ飛んでるんだけど、オレってどうなったんだ?」
「ええと……魔剣士の魔法で吹っ飛ばされて、ほとんど跡形もなく……」
「えっ、そうなのか? そんなんでオレよく復活できたなー。オレの生命力の賜物か?」
「……そうかもな。とにかく、これは復活祝いだ」
と、作りたての豆のスープを鍋ごと渡す。
アロイスは大喜びで鍋を受け取り、ついでに小屋の奥からスープ皿を二枚持ってきた。一緒に食べようということなのか。
「……にしてもフレイン様、何でいきなりあんなことになってたんだ? 庭覗いてビックリしちまったよ」
丸太に腰掛けて豆のスープを味わいつつ、アロイスが言う。
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