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第2038話
アクセルは苦い顔で答えた。
「俺が帰ってくるまで待っててくれって言ったんだけどな……。待ちきれずに、棺に入る方を選んでしまったみたいだ」
「……よくわかんねぇな? 何かのトラブルに巻き込まれたのか?」
「まあ、そんなところだ」
「そっか。そっちも大変だったんだな。フレイン様がやられるとか、よっぽどのトラブルだったんだろうよ」
そんなことを言いつつ、豆のスープにがっついているアロイス。
詳しいことを根掘り葉掘り聞いてこないのは、彼のいいところかもしれない。
「にしても、なんか最近ヴァルハラおかしいよな。魔剣士が出てくるわ、住宅街は壊されるわ、食料も不足してるわ……それをヴァルキリーに訴えても、なーんにも解決しないしよ」
「……むしろヴァルキリーが積極的にヴァルハラを壊しにかかってる気がするけどな。今まで本気で考えてこなかったが……このままだと、本当にヴァルキリーとの戦争が現実になってしまうかもしれない……」
大きな戦争にはしたくないな、と思う。
戦争中に亡くなると遺体を回収できないことが多いので、「棺に入れれば復活する」が通用しないのだ。本当に今生の別れになるかもしれず、そうなったら天国にも地獄にも行けない。
既にヴァルハラは天国みたいなものだから、そこで死んだ者が行きつく先は、本当の意味での「死」――消滅である。
「……ていうかさ、オレたちってそもそも何でヴァルハラにいるんだっけ? 一応、オーディン様の眷属ってことになってるけど」
「え……?」
「いやホラ、なんだっけアレ……ラグナロクだっけ? オーディン様って、そのためにオレたちを集めてたんだよな? あれだ、戦力補強的な?」
「あ……」
「でももうラグナロクは終わっちまったし。んじゃあオレたちって、一体何のためにいるんだって話よ。何かには使えるかもだけど、明確な目的はなくなっちまったよなって」
言われてみればその通りだ。
ヴァルハラで生活していると忘れがちだが、自分たちがここに集められた経緯を考えると、確かに「もういらないのでは」と思えてくる。
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