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第2043話
パッと見は五体満足で問題なさそうだったが、
「あ……」
首筋にざっくりした傷跡が残っていて、嫌な意味でドキッとした。
「ちょっと待て。兄上、傷がちゃんと治ってないぞ」
「ん? どこ……?」
「ほら、頸動脈切ったところだ」
兄の首元に指を這わせる。傷跡特有のざらりとした感触が伝わってきて、また嫌な気持ちがこみ上げてきた。
「……やっぱりオーディン様の魔力が不足してるんだ。たくさんの戦士が一気に棺を使ったから……」
「そうかもね。まあこんなの気にする必要ないよ。生活に支障はないし」
「いや、気にする。兄上が気にしなくても俺が気になるんだ」
「えー……? お前、またそんな細かいこと気にしてるの? 戦士なんて怪我してナンボなのに」
「通常ならそれでいいかもしれないが、今はそれじゃダメなんだ。兄上の復活だって、いつもよりだいぶ時間がかかったんだぞ。だから今は、なるべく怪我をしない方がいい。傷を残すなんてもってのほかだよ」
「はいはい、わかったよ……。怪我をしないように気をつければいいんでしょ」
真面目に諭しているのに適当に聞き流されてしまい、思わずイラッとした。
――兄上は、俺がどんだけ気を揉んだかわかっていないんだよ……!
アクセルは兄の腕をガシッと掴んで、強い口調で説教した。
「おい兄上! これかなり大事なことだぞ! 真面目に聞いてくれ!」
「……起き抜けにそんな大声出さないでよ。耳に悪い」
「兄上がちゃんと話を聞かないからだろ! 無駄な怪我はするなって、何度言えばわかるんだよ!」
「だからわかったってば……。今は棺や泉の効力が落ちてるんでしょ? 復活できなくなると困るから、なるべく怪我するなって言いたいんでしょ?」
「そうだけど……」
「じゃあ、それ以上の注意はいらないじゃない。……シャワー浴びてくるから、その間にちょっと軽食作っておいて」
あっさり腕を振り解き、浴室に消えてしまう兄。
確かに「なるべく怪我をするな」という点は伝わっているのだが、無性にモヤモヤする。根本的に何が問題なのか、まだ理解されていない気がする。
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