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第2044話
いても立ってもいられず、自分も服を脱いで浴室に飛び込んだ。
「うわ、びっくりした……!」
突然入ってきたアクセルに驚き、浴びていたシャワーを止める兄。
「何? どうしたの? お前も一緒に入りたかったの?」
それには答えず、アクセルは正面から兄を抱き締めた。よく見たら首筋だけでなく、正面から斬りつけた傷も薄く残っていた。そのことが悲しく、もどかしかった。
「ねえ……さっきから何なのさ? お前、なんか変だよ?」
「変なのは兄上の方だ」
黙らせるように自分から強引なキスをする。
唇に噛みつき、積極的に舌を差し込み、顔を両手で挟んで、なるべく深く口付けてやった。
「っ……ちょ、っと」
兄に両肩を押され、仕方なく唇を離す。
兄は意味がわかっていないようで、戸惑いつつ少し眉を顰めていた。
「だから何なわけ? 突然こんなことされても、言ってくれなきゃわからないよ?」
「今まで何度も言ってきたんだが。それでもまだわかってないのは、あなたの方だ」
「え……?」
「あの時の俺の気持ち……。俺がどれだけトラウマを抉られたか……血塗れのあなたを見るのがどれだけ苦しかったか……あなたはまだわからないのか?」
「……!」
そう言ったら、兄は今更のように息を呑んだ。
アクセルは兄を壁際に追い詰め、溜息交じりに言った。
「以前も話したよな? 俺は兄上の死に様がトラウマになってるって。そのせいでヴァルハラに来るまでの記憶がないってことも」
「それは……」
「俺、悲しかったんだぞ。帰ってきたら兄上が血の海に沈んでて……自ら頸動脈を切り裂いたって知って、『何でわざわざ死ぬようなことを』って……」
「……ごめんね」
「どうせ深いこと考えずに『復活できるからいいや』って首切ったんだろ。そういうのをやめてくれって言ってるんだよ。俺のことはいつも大事にしてくれるのに、何で自分のことはいつも雑なんだ……。そんなことしたら俺が悲しむって、わかるはずなのに」
兄を抱き締めながら、アクセルは兄の背中に手を這わせた。
そのまま優しく撫でつつ、下に手をすべらせて引き締まった尻を軽く掴む。
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