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第2050話*(リバ注意)

「ちょっと……何で泣いてるの? まだそんなすごいことしてないでしょ……。急に情緒不安定になってない?」 「違うんだ……。上手く説明できないけど、なんか嬉しくて……。こんな風に兄上と交われるのが、本当に幸せで……」 「……それは知ってる。私も、久しぶりの感覚ですごくいい気分だよ……。地上で生きていた時は、こんなこと考えられなかったもんね……」  こくこくと頷きながら、アクセルは自分の目元を拭った。 「だから、今こうしてヴァルハラにいることが本当に奇跡みたいで……。この幸せは、絶対に失いたくないから……それで……」 「うんうん……」 「だから余計に……兄上を……」  それ以上は言葉にならなかった。  今まで何度も同じようなことを伝えてきたが、何度口にしても伝え切れていない気がしてもどかしかった。  すると兄は、両腕を広げてこちらを抱き締めてくれた。  啜り泣いているアクセルを撫で、宥めるように言ってくれる。 「わかってるよ……私だって同じ気持ちだもの。こうして二人でいることがすごく幸せだから、それを失うのが怖いんだよね……。戦うのは好きだけど、死に別れるのは嫌なんだよね……」 「兄上……」 「私たちは離れていた期間が長いからなぁ……。死に別れていた十年間もそうだけど、年齢差があった生前も本心は言えないままだった。本当の意味で相思相愛になれたのはヴァルハラに来てからだから……余計に離れるのが怖くなっちゃうんだよね……」 「……ああ、その通りだ……」 「だから、本当にヤバくなった時は一緒に逃げちゃおうね」 「えっ……?」  アクセルは驚いて兄を見た。好戦的な兄からそんな言葉が出てくるなんて予想していなかったのだ。  兄はにこやかに続けた。 「命を削る戦いは好きだし、戦士としての誇りもある。でも、だからってそれが最優先になるわけじゃない。一番はお前と一緒に生き延びることだ。そこは何があっても忘れないから安心して、ね?」 「兄上……」

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