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第2058話

「兄上……」  思い切って自分の枕を掴み、兄のベッドに潜り込む。  急に弟がベッドに入ってきたからか、兄は少し目を丸くして寝返りを打った。 「あれ……? お前どうしたの? さっきさんざんやったばかりなのに、また甘えたくなっちゃった?」 「い、いや、そういう濃密なことは求めてない……。ただ、近くで寝て欲しいだけだ」 「ああ、添い寝して欲しいのか……。うん、いいよ。じゃあ一緒に寝よう」  兄が腕を伸ばしてこちらを抱き締めてくれる。それでようやく自分も安心できた。  アクセルは目を閉じ、兄の胸元に擦り寄った。いつもと変わらない温もりと香りが全身を包み込んだ。 「兄上……」 「何だい?」 「ずっと一緒にいてくれよな……例えヴァルハラが滅んでも……ずっと……」 「うん、もちろん。ずーっと一緒だよ」  耳元で優しい囁きを聞き、アクセルは安堵の息を吐いた。  おかげで心のモヤも全部消え、その夜はぐっすり眠ることができた。 ***  翌日。アクセルは朝から食料調達の狩りを行っていた。  今のところ、中堅ランカーは順調に復活してきている。だが市場を再開するにはもう少し時間がかかり、住宅街の立て直しも完璧とは言い難い状況だ。  なので配給の食料は引き続き必要だし、建築に必要な木材や土、鉱石などを手分けして採取してこなければいけない。  特に食料調達は一番危険が伴うため、腕っ節が保障されている上位ランカーでないと担当できない決まりがあった。 「うーん……この辺りには、もう大きな獲物はいなさそうだね」  山の中で、兄が周囲を見回す。  仕事とはいえ、兄と一緒に狩りができるのは嬉しかった。あまりにわくわくしたため、家での支度段階で「お前、何でそんなに浮かれてるの?」と兄に怪訝な顔をされた。 「私たちが連日大量に狩りをしているから、獲物も山の奥に逃げちゃったのかなぁ」 「そうだな……。あまり奥に入ると肉を持ち帰るのも大変になるから、深入りはしたくないんだが」

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