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第2059話

「とはいえ、手ぶらで帰ったらユーベル辺りにドヤされそうだしね。しょうがないからもう少し奥に行ってみようか」 「ああ、わかった」  兄が奥に進んで行ったので、アクセルもそれについて行った。  奥に進むと獣の気配が強まり、空気も自然とピリついた。ここから先は神獣の領域ということだ。 「……一匹でもいいから大物が狩れればいいんだが」 「大物は一匹で十分だよ。それ以上は持ち帰れない。あとは他のチームがイイ感じに獲物を狩ってくれていることを願うだけだ」 「ミューやジーク様は、今日も狩りを行っているんだろう? あの二人なら、きっちり大物を仕留めてくれそうだが」 「多分ね。ただ、ミューのやり方があまりに大雑把すぎて、一体の木々が全部薙ぎ払われちゃったみたいなんだ。木材集めにはいいけど、せっかくの獲物がぐちゃぐちゃに潰されちゃって、捌くのも大変だったって聞いたよ」 「そ、それは……如何にもミューらしいエピソードだな……」  確かにミューなら獣を狩ろうとして大鎌を振り回し、辺り一帯も根こそぎ刈ってしまう可能性が高い。豪快なのは結構だが、もう少し気を遣って狩りに取り組んで欲しいものだ。 「……!」  少し離れた場所から、ガサッと茂みが揺れる音が聞こえた。  アクセルはお喋りをやめ、背を低くして身構えた。  ――何の獣だ……? シカか? イノシシか?  大きめの個体ならウサギもありだな……と考えかけ、自分の考えを頭から追い出す。  いや、個人的にウサギはちょっと狩りたくない。ピピに共食いさせることになってしまう。  とにかく気配を殺し、足音を立てずにそっと近づいていった。  背の高い茂みから音がした先を透かし見る。さて、どんな獣がいるのやら……。  ――……えっ?  その姿を確認した途端、驚きと共に拍子抜けしてしまった。 「……カメ?」  のっそりと木の根を齧っている大きなカメが一匹。  これも神獣の一種なのか、今まで見たカメより遥かに大きかった。頭から尻尾まで三メートル近くはあるかもしれない。

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