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第2061話

 とはいえ、ずっとついてこられるのも気になってしまう。  何かあったら助けてくれと念を押し、アクセルはそのカメに近づいた。 「なあきみ、どうしてついてくるんだ? 俺に何か用か?」 「…………」 「俺についてきても、いいことなんてないぞ。悪いことは言わないから、山にお帰り」 「グァ……」  カメが一声鳴いた。  その声は以前どこかで聞いたような覚えがあったが、それがどこだったかすぐには思い出せなかった。 「とにかく、俺たちはこれから山で食料を狩ってこないといけないんだ。巻き込まれたら危ないから、きみとはここでお別れだ」 「…………」  カメはまだ何か言いたそうだったが、アクセルはあえて気にせず兄と別の山に入った。  そのまましばらく麓を探索し、めぼしい獲物がいなかったためもう少し山奥に行ってみる。  今度こそシカなりイノシシなりを狩って帰らなくては……と周囲の気配を探っていると、 「……ねえアクセル」  耳元で兄が声をかけてきた。  何かと思ったら、目線だけで「後ろを見ろ」と促された。  それで首を捻って背後を見たところ、その光景に度肝を抜かされてしまった。 「……って、えええ!?」  先程のカメがついてきていた。  こちらの邪魔にならないよう気を遣っているのか、一定の距離は保ってくれている。  しかし……のんびりしたカメにここまで追跡されると、逆に恐ろしくなってくるのだが。 「……兄上、俺カメに呪われてるのかな」 「そんな呪い、聞いたことないけどね。まあ危害を加えてこないならいっそ彼のことは無視して、無事狩りが終了したらじっくり話を聞いてみればいいんじゃない?」 「そ、そうだな……。ものすごく気になるが……」  どうにもできないので、ひとまず例のカメはいないものとして狩りを再開することにした。  そこからまた一時間くらい周辺を探索したところ、ようやく獲物らしい気配をキャッチした。  足音らしき振動が地面を伝って響いており、風に乗って微かな獣臭もしてくる。  ――これは……大型のイノシシか……?

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