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第2062話

 兄に目配せしたら、兄も目だけで頷いてきた。  気配を殺し、足音も立てないよう、そっとそちらに近づいていく。念のため、兄は反対方向から近づいていった。 「……!」  目標まであと数メートルというところで、茂みから獲物を透かし見る。  思った通り、大型のイノシシだった。足元から頭までの高さが二メートル以上あり、獲物としては上物だと言える。  その分、倒すのは大変そうだが。  ――それでも、初めての狩りの時に遭遇したイノシシよりは小型だな。  あの時は、ランゴバルトが誘き出した巨大イノシシのせいでさんざんな目に遭った。  とにかく小さかったピピを助けたい一心で股下をスライディングし、心臓を一突きしてやったのだ。それで運よく倒せたのはいいが、そしたらランゴバルトに逆恨みされて殺されかけて……云々。  そこだけ切り取れば苦い思い出だが、その後兄が助けに来てくれたから総合的にはいい思い出かもしれない。  片脚も千切れてボロボロになった自分を泉まで運んでくれて、そこで初めてご褒美のキスを……。  ――って、今は余計なことを考えている場合じゃなかった。  甘酸っぱい思い出を横に置いておき、アクセルは目の前の獲物に集中することにした。  兄とは二手に分かれてしまったので、どのタイミングで襲い掛かるかわからない。  でも、兄ならこちらのタイミングに合わせて一緒に戦ってくれるんじゃないかと思えた。  アクセルは集中力を一気に高め、久しぶりに己の力を覚醒させた。 「……タアアァァッ!」  茂みから飛び出し、イノシシに襲い掛かる。  イノシシもこちらに気付いたのか、牙を向けて応戦してきた。 「っ……!」  振り下ろした小太刀がイノシシの牙に当たる。  そのまま顎ごと切り裂くつもりだったが、思った以上に牙が硬く、牙の途中に刃が食い込んで止まってしまった。  ――まずい……!  イノシシが大きく首を振った。  アクセルは力を込めて小太刀の柄を握ったが、首振りの勢いで牙から小太刀がすっぽ抜け、遠方へ大きく吹っ飛ばされた。

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