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第2064話
アクセルとフレインは左右に分かれ、イノシシの突進を華麗に躱した。
だがイノシシの追撃はそれでは止まらず、突進したまま器用に向きを変えると、今度はこちらに向かって走ってきた。
――こっちを狙ってきたか……!
ならば自分のやるべき仕事は、ひたすらイノシシの注意を引くことだ。きっとその間に兄が何とかしてくれる。
俊足を生かし、茂みの間を縫うようにジグザグに走っていく。
今のところイノシシには追い付かれていないが、後ろからの地響きはどんどん大きくなっているようだった。
――やっぱりイノシシは速いな……。
イノシシに限らず、人間と獣とでは元々の走力に違いがありすぎる。いくらアクセルが走るのが得意といっても、イノシシと真剣に競争したら勝てるわけがない。
だからあえてジグザグに移動して撹乱し、方向転換が不得意なイノシシを引き離そうとしているのだが……。
「ギェアアァァッ!」
兄が雄叫びを上げ、再びイノシシに斬りかかる。
今度は比較的柔らかめな胴体を狙い、内臓を直接刺そうとしていた。
「……!」
兄が自慢の太刀をイノシシのどてっぱらに突き刺した。ほぼ根本まで深く突き刺さっているのを見た。
だが大型のイノシシはそれだけでは止まらず、刺さった太刀など物ともせずに兄を弾き飛ばした。
――あっ、兄上……!
行方を目で追っている間もなく、イノシシがこちらに迫ってくる。
こうなったら何とか俺がトドメを……と思い、アクセルは逃げるのをやめてイノシシと向き直った。
両手に小太刀を構え、兄の真似をして脇腹を突き刺してやろうとした時、
「……!?」
唐突に、突進していたイノシシが盛大にすっ転んだ。
足元の何かに躓いたらしく、突進の勢いのまま宙を飛んでいく。
「うわっ……!」
アクセルは慌てて身を伏せた。おかげで大イノシシと接触せずに済んだ。
ドシーン、という巨大な衝突音がしてイノシシは大木に激突した。
かなりの勢いでぶつかったのか、大木がミシッ……と音を立てた。そこからメキメキ割れたかと思うと、ゆっくりと幹が傾いていく。
倒れた大木はイノシシの身体に直撃し、そのままイノシシを下敷きにした。
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