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第2065話
――た、倒した……のか?
すぐにイノシシの様子を確認しに行ってみたが、イノシシはノびているのか死んでいるのか、ピクリとも動かなかった。息がなかったから、死んでいるかもしれない。
何だか終わり方があまりにあっけなくて、ちょっと戸惑ってしまった。
「アクセル」
吹っ飛ばされた兄が戻ってきて、イノシシの腹に刺さった太刀を根本から引っこ抜いた。
そしてマントで雑に血を拭い、太刀を鞘に納めた。
「兄上、怪我はないか?」
「平気だよ。……ちなみにそのイノシシくん、あれのせいで躓いたみたいだね」
「あれ……?」
兄が顎で指し示したところには、大きな石のようなものが置かれていた。
だがよくよく見たらそれは石ではなく、大きなカメの甲羅だとわかった。
――って、これは……。
アクセルはカメの甲羅に近づいて、まじまじと観察した。
手足を引っ込めて殻に籠っているカメ。そうか、あのイノシシはこれに躓いたのか。
というかこのカメ、こんな派手な狩りが行われていたのに逃げもせずずっとここにいたということか? いくら丈夫な甲羅があるとはいえ、怖くなかったんだろうか。図太いというか何というか……。
「グア」
「……!」
ようやくカメは手足を伸ばし、次いで首をひょっこり出してこちらを見上げてきた。
何を言えばいいかわからず、アクセルはとりあえずこう話しかけていた。
「ええと……だ、大丈夫だったか? 怪我はしていないか?」
「グア」
「そうか、大丈夫そうだな……。丈夫な甲羅があってよかったよ」
「グアァ……」
カメが欠伸するように長めに鳴いた。間延びしたような呑気な声を聞いて、アクセルはようやくあることを思い出した。
――って、この声は……。
そうだ。この鳴き声は、以前ホズと魔力の源を辿った時――地下深くの結晶で眠っていたカメとそっくりだ。突然起き出したかと思ったら切り出した結晶を食い散らかし、魔力の源である大木も食い尽くして、再び結晶で眠りについたカメ。
結局正体はわからず終いだったけど……。
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