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第2066話

「まさかきみ、あの結晶のカメ……じゃないよな……?」 「グァ……」 「いや、さすがにそれはおかしいか。姿形とか、全然違うもんな……」  このカメの正体は不明だが、こちらに敵意がないならこのまま放っておくのが一番かもしれない。  彼のおかげで狩りが早く終わったと言えなくもないし。 「……それにしても、このイノシシどうする?」  イノシシの大きさを測るように、兄がイノシシの周りをぐるぐる歩き回っていた。 「さすがにこのまま運ぶのは無理だから、ここで大雑把に斬り刻むことになりそうだけど。今更運び手の応援を呼ぶわけにもいかないしね」 「そうだな……。あんまりやりたくないが、仕方がないか……」  山の中で獣を捌くと、血の臭いを嗅ぎつけて狼等の肉食動物が寄ってきてしまう。  せっかく狩った大物を奪い取られるのもシャクだから、なるべく早く捌いて下山したいところだ。  まず兄がイノシシの頭を切り落とした。アクセルも四本の脚を切り落とし、次いで胴体部分を真っ二つに掻っ捌いた。  胃や腸などの内臓を取り出し、戦士に人気の肉の部分をざっくりと切り分ける。  さて、そろそろ帰るか……と切り分けた肉を抱え上げた時、おとなしくしていたカメがヨタヨタと近づいてきた。  そして持ちきれなかったイノシシの内臓を、ここぞとばかりにムシャムシャ食べ始めた。 「え、おい……」  まさかこんな時に食欲を発揮するとは思わなかった。  あの地下空間でも起き抜けに大量の結晶を食べていたけど、このカメは獣の内臓まで食ってしまうのか。随分な肉食ではないか。 「……まあいいよ。内臓はそんなに需要ないからね。始末してくれるなら、その方が好都合だ」 「う、うん、まあ……」 「そんなことより、早く帰ろう。狼の集団に襲われたら面倒だ」  兄に促され、なるべく急いで下山する。  途中、狼の遠吠えが聞こえてきた気がしたが、結局襲われることなく無事麓に到着した。 「おや、これはまた随分な大物じゃないですか」  狩ったイノシシを広場に持って行ったら、配給を山分けしているユーベルに褒められた。

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