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第2067話

「これだけあれば、今日の配給分としては十分でしょう」 「ありがとうございます。何とか頑張りました」 「ところで、あそこのカメも獲物ですか?」 「……えっ?」  驚いて振り返ったら、広場の隅で置物のように佇んでいるカメが目に入った。  一定の距離を保ってはいるが、何をするでもなくジーッとこちらを見てくる。何だかちょっと気味が悪くなってきた。 「えええ……!? 何でまだついて来てるんだ……?」 「お前、ホントに気に入られてるね。ここまで好かれてるとお兄ちゃん、ちょっとヤキモチ焼いちゃうかも」 「冗談はやめてくれ……。さすがに街中までついてこられるのは困るよ……」  仕方なくアクセルは、そのカメに近づいた。  そして今度こそ真面目に話をしてみようと、膝を折ってカメに目線を合わせた。 「なあ、きみはどうして俺について来るんだ? 何か目的でもあるのか?」 「…………」 「食べ物が欲しいなら、別のところを当たった方がいいぞ。俺たちもあまり食料に余裕がなくて、こうやって毎日狩りに出掛けなきゃいけない状況だからな」 「…………」 「もっと余裕があれば、うちで飼ってもよかったんだけど……今はちょっと無理なんだ。だから、特に用がないなら住処にお帰り。俺に近づいてもきみの得にはならないからさ」 「グア……」  一声鳴いたかと思うと、カメは手足と首を引っ込めて甲羅に籠ってしまった。  そのまま何も言わなくなってしまったので、アクセルは困って甲羅を叩いた。 「ちょっと……引きこもりは困るぞ。おーい」  コンコン、と叩いても反応はゼロ。「お前の説得なんか知らん」と言わんばかりの態度だった。  さすがにどうすればいいかわからず、アクセルは兄を見上げた。 「兄上、どうしよう……」 「もう放っておけばいいんじゃない? 勝手について来ているのはそのカメくんだし。目的もわからないし。こっちの害にならないなら、いないものとして扱った方がいいかもよ」 「そう、だな……。しかしモヤモヤする……」

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