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第2068話

 仕方なくアクセルは腰を上げ、今日の配給を貰いに行った。  そこそこ苦労して大物を狩ったのに、結局手元に残ったのは一日分の切り落とし肉だけだった。まあ、戦士全員に分配してしまったらこんなものだよな……。 「うーん……今日という今日はステーキやすき焼き食べたかったなぁ」  家に帰る道中、兄が小さく口を尖らせた。 「ねえお前、何か嵩増しメニュー作れない? 私、きっとこれだけじゃ足りないからさ」 「嵩増しメニュー……豆腐とかをハンバーグに混ぜて作るアレか? できなくはないが、そもそも豆腐自体も今は市場で売ってないんだよな……」 「ご飯の嵩増しでもいいよ。確か、こんにゃく混ぜると嵩増しになるんだよね?」 「う、うーん……まあ。上手い具合に工夫してみるよ……」  いくら食料が足りないからって、兄を飢えさせるのは本意ではない。  兄は元々お肉大好きの大食いだから、今の食糧事情では腹が満たされないのだ。何とかしてあげなくては。 「それより兄上、さっきの狩りで怪我してないか? 思いっきり吹っ飛ばされていたが」 「ああ、平気だよ。ほとんど無傷だから」 「ほとんど……ってことは、少しは傷を負っているってことなのでは」  兄の腕を取って腕まくりしてやったら、細かい擦り傷がたくさんついていた。おそらく無数の木の枝に引っ掛かれたのだろう。 「ほらやっぱり……。これのどこが『無傷』なんだよ。早く泉に行かないと」 「お前は細かいねぇ……。こんなの、泉に行くまでもなく自然に治るでしょ」 「いや、ダメだ。そもそも首や腹の傷跡も残ったままなんだから。ついでにそっちも治してこよう」 「ええー……めんどくさい……。こんな傷、誰も気にしないのに……」 「俺は気になるんだよ! つべこべ言ってないでさっさと行くぞ」  嫌がる兄を強引に引っ張り、アクセルはオーディンの泉に向かった。  住宅街襲撃直後は、それこそ泉の水が真っ赤になるくらい混雑していたが、今はそこまで混雑していないようだった。岩場の影だったら、そんなに邪魔にもならないだろう。

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