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第2072話
そう文句を言いつつ、気にせず山菜の採取を続行した。そろそろ陽も暮れるし、早めに籠をいっぱいにして帰らないと……。
「グァ……」
隣で様子を窺っていたカメが、トントンと前足でこちらをつついてきた。
いい加減邪魔されるのにもイラッとしてきて、アクセルは少々語気を強めて聞いた。
「だから何だよ? 何か用があるなら言ってくれないとわからないぞ?」
「グゥ……」
「こっちにもいろいろ事情があるんだからな。これ以上、食料補給の邪魔はしないでくれよ」
そう注意してもう少しだけ山菜を集めようとした時、狼の遠吠えのような音が聞こえた。
「えっ……?」
ハッと顔を上げたら、遠くでチラチラ揺れている光が複数。いや、複数どころか四方に無数の光が見える。
これは……これはまさか……。
――ヤバい……オオカミの群れだ……!
いつの間にか囲まれていた。麓だと思って油断していた。どうして全然気づかなかったんだろう。こんな時にターゲットにされてしまうなんて、とことんツイてない……。
「く……」
アクセルは右手で小太刀の柄を掴んだ。
一点突破して逃げるという手もある。
が、その場合せっかく集めた山菜を手放さなければならない。そうなったら、今日のピピの食事が作れなくなってしまう。これでは何のために山に入り直したかわからない。
くそ……急な山菜採りの間くらい、見逃してくれればいいのに……。
「ウオォォーン!」
今度はもっとハッキリと遠吠えが聞こえた。
無数の目が確実にこちらに近づいており、オオカミの臭いもだんだん濃くなってきた。
――仕方ないか……。
アクセルはカメの甲羅の上に山菜の籠を置き、両手で小太刀を構えた。
山菜は惜しいが、やはり生きて帰ることが最優先だ。生きてさえいれば……一日くらい食料がなくても何とかなる、はず。
「ウオォーン!」
長い咆哮と共に、オオカミが一斉に襲い掛かってきた。
こうなったら片っ端から切り捨ててやろうと、アクセルは正面のオオカミを見据えた。
その時だった。
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