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第2073話

「ギャイン!」 「っ……!?」  何かに弾かれたように、オオカミ達が吹き飛ばされた。  しかもただ吹き飛ばされたのではなく、頭部が削れたように血まみれになっており、吹っ飛ばされた側から死んでいるようだった。まるで回転する破砕機に頭から突っ込んだみたいに。  ――な、何だこれ……?  未知の恐ろしさを感じ、アクセルは身を竦ませた。  少なくともこちらは何もしていない。こんな凶悪な罠、使おうと思っても使えない。  自分のすぐ目の前に見えない罠が仕掛けられているのかと思ったら、一歩も動けなかった。 「キャン、キャン!」  襲ってきたオオカミ達は、仲間がバタバタ死んでいく様子を見るや一目散に逃げ出した。これ以上ここにいてはいけないと、本能で悟ったらしかった。  ――……って、ここからどうすればいいんだよ……。  逃げてくれたのはいいが、こちらも動けない。どこに見えない罠が仕掛けられているかわからない以上、迂闊に歩き回れなかった。  どうしよう……どうしたらいいんだ……。小太刀で確認しながら歩いていくとか……? 下山に何時間かかるかわからないけど、それしか確実な方法がない気がする……。  ただ、あまり時間がかかると今度は兄が心配してこちらを捜しに来てしまう可能性が……。 「グア」 「ぎゃあ!」  またもやカメの前足でトントン叩かれ、アクセルは飛び上がりそうになった。  何とかその場に踏み止まり、背後を振り返る。 「あ、きみか……。きみは無事みたいだな……?」 「グァ」 「でも気を付けた方がいいぞ。この辺一帯、変な罠が仕掛けられているみたいだし」 「グェ……」  カメはどこか不思議そうな顔をして、そのままのっしのっし歩き始めた。 「あっ、おい……! だから危ないって……!」  ヒヤヒヤしながら見守っていたのだが、カメの歩く先には罠らしい罠はなかった。  それどころか、カメは死んだオオカミの腹部に噛みつき、当たり前のように内臓から食べ始めた。

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