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第2074話
「ええ……? それも食べるのか……?」
とんでもない暴食カメだな……と呆れつつ、仕方なく様子を見守る。
周りには何匹か死んだオオカミがいる。一瞬「持って帰ろうかな」と考えかけたが、オオカミは上手く捌いてもあまり美味しくないから食料には向かないだろう。山菜が無事だっただけでもヨシと思わなくては。
「それにしても……本当にきみは何がしたいんだ? 悪いが全然わからないぞ」
「グァ……」
「ピピみたいにカタコトでも喋れれば、多少なりとも意思疎通が図れるんだが……。さすがにそう都合よくはいかないか……」
「…………」
するとカメは食事していた口を止めて、ゆっくりこちらを見上げてきた。
今度は何だろう……とカメを見返していたのだが、
「人の言葉を使うのは疲れるのですが。礼の一言は述べておかねばなりますまい」
「…………はっ?」
突然流暢な台詞が聞こえてきて、アクセルは一瞬フリーズした。
驚いて周囲を見回してしまったが、自分以外に喋れる人はいない。
じゃあさっきの言葉は、本当にこのカメが……?
「戦士の青年。一族の者にご助力いただき、感謝いたします」
「えっ……あ、はあ……あの、一族の者って……?」
「地下空間で眠っていた結晶のカメのことです。彼が目覚めるチャンスは非常に少ないのですが、目覚めたら目覚めたで大量の結晶が必要なのでございます。それが、今回は目覚めた時にたくさんの結晶が用意されていたとかで、非常に助かったと申しておりました」
「そ、そうなん……ですか……」
曖昧に返事をしたものの、あの時大量の結晶が切り出されていたのはただの偶然だ。あのカメが目覚めたのも予期せぬことだった。
全ての偶然が重なっただけにすぎないのだが、このカメは代わりに礼を言いに来てくれたらしい。
……というか、このカメと結晶のカメが親戚だとは思わなかったのだが。神獣には妙な繋がりがあるものだ。
アクセルは身を屈めてカメに聞いた。
「それで、さっきからずーっと俺を追いかけていたのか?」
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