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第2077話

「そういうわけだから、食事をしたいなら他を当たってくれ。うちよりもっと食料溜め込んでいる家はいっぱいあるからさ」  例えばユーベルのお城とか。もっとも、ユーベルがカメの餌を提供してくれるとは限らないが、うちよりは可能性があるはずだ。  するとカメはこちらを見上げて、流暢に喋り始めた。 「今日のところは、食事はもう十分でございます。なので次は、安眠できる場所を提供していただきたく」 「はい……? 安眠できる場所って、そんなの殻に籠れば安全だろう?」  イノシシに蹴られてもビクともしなかったんだから、と言うと、カメは小さく首を振った。 「外部から攻撃される恐れのある場所では、安眠できません。結晶のカメのように結晶と一体化できれば絶対安全ですが、それができない者も多いのです。安全な寝床を確保するのも一苦労なのですよ」 「そ、そうなのか……それは大変だな……」 「見たところ、あなたはとても広い庭をお持ちのご様子。このベランダの隅で構いませんので、寝床として使わせていただけないでしょうか」 「あー……それなら、まあ……」  自分一人で決めるわけにはいかないので、チラリと兄に確認の視線を送る。  すると兄もベランダにやってきて、腰を屈めてカメを見下ろした。 「すごいなぁ……本当に流暢に喋るんだね。カメは見た目によらないな」 「不思議な神獣だよな。ところで兄上、このカメ、ベランダの隅で寝かせてくれって言ってるんだが」 「まあいいんじゃない? ただし、うちの壁をばくばく食べないでよ?」  あっさりと了承する兄。食料に関することでなければ、このカメに対してもかなり寛容なようだ。  アクセルは出来上がった山菜のスープをピピにあげつつ、その間にベランダに藁を敷き詰めてカメの寝床を作ってやった。古くなったタオルやクッションも使ってやったので、かなりふかふかで寝心地のいい場所ができたと思う。 「ほら、できたぞ。今日はここで休んでくれ」 「グァァ……」  カメは満足げに鳴くと、のっしのっしと寝床に着いた。

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