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第2078話
そして我が物顔に寝そべると、そのまま手足を引っ込めて眠り始めた。
微動だにしないカメの甲羅から「ZZZ」という鼾 が聞こえてくる。
――まったく……慇懃無礼というか、図々しいというか……。
まさか寝床まで要求されるとは思わなかった。
別に減るものではないからいいけど、ずっと居座られても少々困る。このカメを満足させられる食事は、そう毎日提供できるものではない。
「ぴー……」
一方のピピは終始「なんだコイツ?」みたいな目でカメを見ていた。
ピピとしても突然現れた大きなカメは不可解なのか、どことなく不機嫌になっている気がした。
「ごめんな、ピピ。なんか成り行きでこうなってしまったんだ。きみの邪魔はさせないから、しばらく我慢してくれな」
「ぴぇ……」
「さすがにあのカメも、ずっとうちに居座ることはないよ……多分。食事もちゃんと別にするから、安心してくれ」
「ぴ……」
山菜スープを食べ終わったピピは、甘えるようにこちらに身体を擦り寄せてきた。
アクセルもふわふわの身体を撫でてやったのだが、そしたらたどたどしい言葉でこんなことを言われた。
「ピピ、アクセルすき。アクセルは、ピピのことすき?」
「もちろん好きだよ。当たり前じゃないか」
「じゃあ、あのカメと、どっちがすき?」
「……えっ?」
「ピピ、カメみたいに、うまくしゃべれない……。カメみたいに、バリア、はれない……。カメみたいに、アクセルまもれない……」
「……え、さっきの話聞こえてたのか?」
キッチンで兄に説明した出来事、ピピにも聞こえていたようだ。さすがうさぎというか、地獄耳すぎてちょっと恐ろしい。
しょぼん……と耳を垂らしているピピに、アクセルは優しく話しかけた。
「心配しなくても、ピピはちゃんと役に立ってるよ。確かにバリアは張れないけど、その分誰より足が速い。それに危ない気配にも敏感だ。俺が変なところに足を踏み入れそうになった時は、いつも『危ないよ』って止めてくれるじゃないか。ピピのおかげで、俺は何度も命拾いしてるんだよ」
「ぴー……」
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