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第2079話

「落ち込む必要はないさ。ピピは俺の癒しだし、山歩きの時なんかはいつも助かっている。本当にありがとう、大好きだよ」 「ぴ……」 「そうだ、久しぶりに一緒に風呂にでも入るか。夜の露天風呂も風情があっていいだろ」 「ぴー♪」  そう言ったらピピは嬉しそうに耳をパタパタさせ、こちらにじゃれついてきた。 「ピピ、アクセルすき。これからも、ずっといっしょ」 「ああ、そうだな。この先もずーっと一緒だ」  アクセルは庭の露天風呂にホースで湯を浅く溜め、ピピを招いて湯浴みをした。  ピピは久々の湯浴みが嬉しかったのか、終始テンションが高くはしゃぎまくっていた。  ――本当に、こういう毎日が過ごせるだけでいいんだけどな……。  十分な食事をして、昼間は狩りなり死合いなりで仕事をして、仲良く風呂に入って静かに就寝する……これだけでいい。  たったこれだけのことなのに、今は食料の確保すらままならなくて口惜しくもあった。  早く平和なヴァルハラに戻って欲しい。死合いに命を燃やしていた頃が懐かしい。  ――オーディン様の魔力が回復していれば、死合いも再開できそうなものだけど……。  いっそのこと、偵察がてらオーディンを直接見舞いに行くというのもアリかもしれない。  兄はラグナロク直後にオーディンに謁見したことがあるらしいし、会えない相手というわけでもないだろう。  オーディンにさえ会えれば、今ヴァルハラがどんなことになっているのか直接訴えることもできるし、ヴァルキリー達の振る舞いに苦情を入れることもできる。一石二鳥ではないか。  ――思いつきだけど、悪くないかもな。兄上に相談してみるか……。  綺麗に洗ったピピの毛並みをタオルで拭きつつ、アクセルも自分の身体を拭いた。  露天風呂の片付けをしてリビングに戻ったら、兄もまた風呂上がりだったらしく首元にタオルを巻いていた。 「長いお風呂だったねぇ。ゆっくりできたかい?」 「ピピは身体が大きいんだ、時間がかかるのは当たり前さ」

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