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第2080話
「まあね。それはそうと、お前夕飯食べてないでしょ。今更ガッツリ食べられないだろうから、軽食にしておいたよ」
と、兄がキッチンからパニーニを持ってきてくれる。薄めにスライスした鹿肉とチーズが挟まれており、パンの表面も網目状に焼かれていた。とても美味しそうだ。
さすが兄は、こちらの食欲をよくわかっていらっしゃる。
「ありがとう、いただくよ」
パニーニと一緒に温めてもらったホットミルクを飲み、ちょうどいい具合に腹も満たされていく。
食事があらかた済んだところで、アクセルは兄に聞いてみた。
「兄上、オーディン様に謁見ってできないかな」
「オーディン様に? それは何で?」
「今どうしていらっしゃるのか、ふと気になってな。結局のところ、オーディン様の魔力さえ回復すれば泉も棺も使えるだろ? そしたら中堅ランカーも復活するし、死合いも再開できるし、狩りだって自由にできるじゃないか。元のヴァルハラに戻るよ」
「そう、だね……。オーディン様が今どうしているのかは、私もちょっと気になっていた」
兄が顎に手を当てて考え込む。
「細かい管理はヴァルキリーに丸投げだとしても、私たちは一応オーディン様の眷属だ。自分で粒揃いの戦士を集めて、ある程度の魔力もつぎ込んでいるのに、そこに全く関与しないのはおかしいんだよ。何なら、これだけのやらかしをしたヴァルキリーを全員処分してもいいくらいなんだ」
「ま、まあ全員処分が妥当かはわからないが……ヴァルキリーへの懲罰があっても不思議じゃないんだよな」
でもヴァルキリーたちが罰を受けたような形跡はない。
それどころか、自分たちのやらかしの火消しをするべく、あちこちの神にヴァルハラの立て直しを要求しているみたいなのだ。常に上から目線だから、要求自体はあまり上手くいっていないみたいだけど。
「兄上がオーディン様に謁見した時は、一体どうやったんだ? 確かラグナロク直後に謁見したんだよな?」
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