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第2081話

「うん、した。何が何でもお前を復活させたかったから、何でもするつもりで頼み込みに行ったんだ。確かあの時は一度バルドル様に会って、面会の取り次ぎをしてもらって……だったかな? あまりよく覚えてないけど」 「バルドル様なら、取り次ぎもしてくれそうだな……。明日辺り、仕事が終わったら訪ねてみるか」  使い終わった食器とカップをキッチンで洗い、寝る準備をする。  明日の仕事も食料調達になるだろう。けど、個人的には獣の狩りではなく山菜採りに従事したいところだ。 「そう言えばお前さ、欠けている記憶ってないの?」  唐突に兄がそんなことを聞いて来る。アクセルは訝しげに顔を上げた。 「欠けている記憶……? どういう意味だ?」 「いやね……お前、一度ラグナロクで消えてその後復活しているわけじゃない? 復活直後は記憶もなくて、時間をかけて徐々に元通りになっていったわけでしょ? 思い出せていない記憶もあったりするのかなって」 「それは……」  確かに、復活直後の自分は本当にまっさらで「何もない」状態だった。自分の名前すらわからなかったし、兄・フレインとの関係も、誰が友人なのかも覚えていなかった。  兄と一緒に生活していくにつれ、ゆっくりと記憶を取り戻していったのだが、自然な流れで思い出していったので、記憶が一気に蘇った……みたいな決定的な出来事があったわけではない。中にはまだ思い出せていない、隠された記憶があるのかもしれない。  でも……復活してから結構長い時間が経っているから、もういい加減思い出せていない記憶なんてないと思うのだが……。 「……わからない。けど、今更そんなのないと思うけどな。仮にあったとしても、取るに足らない出来事だから思い出せていないだけだろうし。生活に支障はないだろ? 第一そんなこと言ったら、兄上だって思い出したくないことのひとつやふたつ、あるのでは?」 「はは、確かに。昔の記憶をほじくり返しても意味はないか」

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