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第2083話

 足元からカメがぬうっと首を伸ばしてくる。  籠っていた甲羅から手足も伸ばし、呑気に「グアァ……」とあくびをした。 「私のバリアがなければあなた方も死んでいたでしょう。命拾いしましたね」 「あ……あ、りがとう……。でもあの……これは一体……? 襲撃って一体誰が……? 他の人たちはどうなったんだ……?」 「それはわかりません。事件を調査し解決するのは、私の役目ではありませんので」  そして「グアァ……」とあくびをもうひとつ。カメは相変わらず呑気なようだ。  言葉を失っていると、兄もようやく起きてきた。まだ寝起きなのか、金髪が爆発したままになっている。 「おはよう、アクセル。さっきから何を騒いでいるの?」 「……兄上……」  振り向き、縋るように兄を見つめる。  兄は何かを察したのか、つかつかとベランダに出てきて同じように外を見た。  兄の目にも、焼け野原になった光景が見えたようだった。 「ど、どうしよう兄上……。俺たち、これから一体どうすれば……」 「……状況はわかった。ひとまず落ち着きなさい」  気付けのように、バシッと強めに背中を叩いてくる兄。それで少しだけ目が覚めた。 「見ただけじゃ詳しいことは何もわからない。とりあえず着替えてくるから、お前はここで待っていなさい。くれぐれも、先走って動くんじゃないよ?」 「は、はい……」  兄はすぐにリビングへと引き返し、着替えて髪を整えて五分程度で戻ってきてくれた。  とても落ち着けるような状況ではなかったが、兄に首根っこを掴まれてリビングに引き戻され、キッチンに押し込まれて強制的に朝食を作るよう言われる。 「いいかい? こういう時は、なるべくいつも通りの生活をするよう心掛けるんだ。何も考えずに料理をして、まずはしっかり腹ごしらえをしよう。それから状況を確認する。今更慌てたってどうにもならないからね」 「は……はい……」 「大丈夫。不幸中の幸いだけど、私たちはどっちも無傷で済んだ。他のみんなはどうかわからないけど、少なくとも兄弟で死に別れることはなかった。それだけでも、まずは感謝しなくちゃね」 「そ、そうだな……」

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