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第2084話

「じゃ、お前は適当に朝食を作っておいて。私は周りの様子を軽く見てくるからね」 「えっ!? 危なくないか? また爆撃されでもしたら」 「大丈夫だよ、庭から外を眺めるだけだもの。いざとなったらカメくんがバリア張ってくれるでしょう」 「う、うん……でも……」  それでも不安で生返事をしていると、兄はこちらをぎゅっと抱き締めて耳元で囁いてくれた。 「……死ぬ時は一緒だから。今度こそ、お前を置いていったりしないよ」 「兄上……」 「だから心配しないで。お前の朝食、楽しみにしてるね」  爽やかに微笑み、兄はベランダから外に出て行った。  ――すぐそこの庭で様子を窺うだけだ……大丈夫、だよな……。  そう自分に言い聞かせ、言われた通りアクセルは朝食の支度をした。  食材が極めて少なかったので、干し肉の余りや野菜の切れ端を全部投入したスープに小麦粉を水でこねただけの団子を入れ、簡単なすいとんを作った。これで家にある食料はほぼなくなった。 「ただいま」  テーブルに朝食を並べていると、兄がベランダから戻ってきた。  ああ、よかった。ちゃんと帰ってきてくれた……。 「それで、どうだった? 周りの様子は」 「いや……何というかね、ただの爆撃にしては変なところがたくさんあったんだ」 「変なところ……?」 「まずひとつ、ユーベルの城が全く見えないのがおかしい」 「……えっ?」  ユーベルは元貴族で、ランキング四位の強者である。  上位ランカーだからその特権を大いに利用し、びっくりするほど巨大な城に住んでいるのだ。その建物は遠くからでもよく見えるし、家の庭からも遠目に眺めることができる。 「一面が焼け野原になるレベルの爆撃だから、もちろん城が無事とは思わない。でも、あれだけ大きな城が一晩でまっさらになってしまうのも不自然だ。少なくとも城壁の一部くらいは残っているんじゃないかな」 「そ、そうなのかな……。爆撃の勢いが大きすぎて上物ごと吹っ飛ばされてしまった可能性も……」

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