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第2085話
「だとしたら、地面がクレーターみたいに抉れているはずじゃない? 城だけ忽然と消えてしまった……みたいな現象は、どう考えてもおかしいよ」
「な、なるほど……」
兄が席に座り、当たり前のようにすいとんを食べ始める。
アクセルはピピとカメに食事を与えてから、自分の席に着いた。
「あと、死臭が全くしてこないのも気になった。確かに焦げ臭くはあるんだけど、もしヴァルハラ全体が爆撃を受けて多くの戦士が死んでしまったのなら、ある程度は肉の焼ける臭いがしてくるはずなんだ」
「た、確かに……」
「でも、私が感じた限りでは人が焼ける臭いはなかった。お前は何か感じた?」
「いや、そういうのは特に……。普通に焦げ臭かっただけで……」
「だよね。だから今回の出来事、かなり奇妙なんだ。詳しく調べてみないとわからないけど、もしかしたら本当は爆撃でも何でもなくて、ただの幻覚だった……って可能性もあるかもしれない」
「幻覚……」
幻覚だったらいいな、と心から思った。
幻覚は幻覚で困るけど、大勢の友人や仲間がいなくなってしまうことに比べれば遥かにマシである。いくら人の死を見慣れていると言っても、知り合いが死んでしまうのはやはり悲しい。
――というか、徐々に復興してきたところだったのに、何故こんなことに……。
自分たちはただ、ヴァルハラで平和に暮らしたいだけだ。
戦士同士切磋琢磨して命懸けの死合いを行い、死んでも復活してまた同じような生活に戻る。狩りをしたり玉鋼を採掘に行ったり、何の気なしに山歩きするのも楽しかった。
そんな生活をしたいだけなのに、どうして……。
「お前、またしょうもないことをぐるぐる考えてるね?」
向かいの席の兄が、ガタンと立ち上がった。
そして身を乗り出してこちらの額を弾き、スプーンを強引に握らせた。
「ほら、ちゃんとご飯食べて。どんな時でも栄養補給はしないといけないよ。でないと、いざという時に動けないからね。考えるのはその後でいい」
「う、うん……」
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