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第2088話
アクセルは何度か大きく深呼吸し、パニックになりそうな頭を何とか冷静に戻した。
それから改めて、周りの景色をよく観察してみる。
――この景色……。
のどかで、穏やかで、平和な光景。争いの気配はなく、きっと今日もいい一日になるだろうと思える……そんな景色だった。
だけど以前、こんな光景をどこかで見たような気もする。
これは……これは確か……。
「ふと思ったんだけど……ここ、透ノ国じゃないかな」
「えっ? 透ノ国……?」
唐突に兄がそんなことを言い出し、アクセルははたと兄を見つめた。
「透ノ国っていろんな土地が点在してて、一定の距離を進むとワープしてまた別の場所に行けるでしょ? 今の状況ってその特徴と似てる気がするんだ」
「た、確かに……。ということは、俺たちが寝ている間に家の周りだけ切り取られて、透ノ国に移動させられてしまったってことか……?」
「その可能性は十分考えられるかも。どうやったのかは知らないけど、もしそれが本当だとしたら、ヴァルハラは爆撃なんかされてないってことになるね」
「……!」
それを聞いて、一気に希望が湧いてきた。
そうか、それなら他の戦士は皆無事なのだ。ヴァルハラに帰れれば、他の戦士はちゃんと生きているのだ。
ならば、何が何でも透ノ国を抜け出さなければ……。
「さて、まずは私たちの家にもう一度戻ろうか」
兄が再び歩き始めたので、アクセルも迷わずついて行った。
透ノ国から脱出するには、中央に聳え立つ巨大な樹を上って行かなくてはならない。人間の力ではとても上りきれないので、ピピの背中に乗って行くのが必要不可欠なのだ。
「……でもその場合、カメはどうなるんだろう?」
ポツリと頭に浮かんだ疑問を口にする。
自分と兄はピピの背中に乗れるが、さすがにカメは乗せることができない。ピピが潰れてしまう。
そうなると、カメだけここに置き去りということになってしまうのだが……。
「カメくんのことは後で考えよう。とりあえず今は、うちを見つけることが最優先だ。いいね?」
「う、うん……」
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