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第2089話
何やら少し嫌な予感がしたが、いいアイデアがあるわけでもないのでなるべくそのことは考えないようにした。
さんざん歩き回り、何回ものワープをくぐり抜け、ここじゃない、また違った……というのを繰り返し、どうにかこうにか自分たちの家に戻ってこられた。途中から何回ワープしたかもわからなくなってしまった。
「た……ただいま……」
庭から家の敷地内に入った途端、お決まりのようにピピがすっ飛んできた。
「ぴー! ぴー!」
「ピピ、よかった……無事だったんだな。いい子で待っててくれて、本当によかった」
「ぴー!」
「それでピピ、どうやらここは透ノ国らしいんだ。だから一度脱出して、ヴァルハラに戻ろうと思う。それで……」
アクセルは家のベランダを仰ぎ見た。
例のカメは、昨日作った寝床に居座って殻に籠っていた。
「……なあ、きみはどうする? 透ノ国の大樹、自力で登ってこられるか?」
「…………」
「もし無理そうなら、しばらくここで待っていて欲しいんだ。ここを脱出したらバルドル様辺りに使えそうな道具を借りて、また迎えにくる。美味しい食べ物はないけど……確かきみって雑食だったよな? なら庭の雑草食べていいから、俺が迎えにくるまでそれで……」
そう言いかけたら、カメはすぽんと甲羅から手足と首を出した。
そしてにゅっと首を伸ばし、こちらを見上げて言った。
「私のことはお気になさらず。どうぞ、あなた達だけでお戻りください」
「あ、いやだから、その後すぐに迎えに……」
「元々、一晩だけ泊めていただけるだけでよかったのです。十分食べ物も恵んでいただきました。これ以上、あなたの世話になるつもりはございません」
「え……でも……」
「ここにいれば、様々な世界に行くことができます。食べ物に困ることもありませんので、お構いなく」
「い、いや、そういうわけには……」
再び手足と首を引っ込めて殻に籠ってしまったカメ。
このまま放置しておくわけにもいかず甲羅を叩いたのだが、後ろから兄に肩を掴まれた。
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