2092 / 2202
第2092話
「さて……とりあえず戻ろうか。ピピちゃん、よろしく頼むよ」
「ぴー」
任せろ、と言わんばかりに背中を向けてくるピピ。
だが、兄がその背に跨ろうとした時だった。
「まって」
「…………えっ?」
突然後ろから声が聞こえて、アクセルも兄も勢いよく振り返った。
そこには何故か、以前退治したはずの少女が静かに佇んでいたのだ。
「き、きみは……まさか、メリナ……か?」
「そう。おぼえててくれてうれしい、お兄ちゃん」
「な、何故……!? きみは鏡の中に封印したはずじゃ……」
「そうなんだけど、いまメリナがいるところをきりとってすかしのくににつなげれば、ふつうにでてこられるなーって。そうおもってやってみたら、ふつうにうまくいっちゃった」
「えええ!?」
要するに、鏡の中の世界をわざと切り取り、透ノ国の一部に仕立て上げたということだ。
見た目は幼女だけど、普通にその辺りの頭は回るようだ。これじゃどこに封印しても意味がないじゃないか……。
「……ちょっと待って。きみ、自分で世界を切り取ることができるのかい?」
兄がメリナを問い詰めたところ、メリナは当たり前のように頷いた。
「できるよ。あく……あくう……なんとかっていうまほうをつかえば、かんたんにきりとれるよ」
「亜空、何とか……。『亜空切断』か何かかな」
「そんななまえだったかも。でも、なまえはむずかしくても、まほうじたいはそこまでむずかしくないもんね。えらいかみさまだったら、みんなできるとおもう」
「嘘だろ……? それじゃ透ノ国がこんな風になっているのって、全部神々のせい……」
「アクセル、今の問題はそこじゃないだろう?」
ペシッとこちらの後頭部をはたき、兄は続けた。
「じゃあメリナちゃん、切り取られた元の世界がどうなるか知ってるかな?」
「んーと、どうにもならなかったきがする。もとのせかいはもとのまま、ふつうにそこにあったとおもうの」
「えっ……そうなのか?」
ともだちにシェアしよう!