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第2093話

「でも、いきものはきりとりのパワーにたえられなくて、ほとんどしんじゃうから。とくべつなバリアでもないかぎり、いきてすかしのくににはこられないんじゃないかしら」  それを聞いて合点がいった。  今回アクセルたちの自宅を切り取った者は、本当はアクセルと兄・フレインをまとめて始末するつもりだったのだ。ところがたまたま例のカメが家で寝ていたため、バリアで防がれてしまった。  それで結局アクセルたちは生きたまま、家ごと透ノ国に移動させられてしまったというわけだ。 「なるほどね……。私たちを始末したがっている神が、どこかにいるってことか……」  兄が顎に手を当てて考え込んだので、アクセルは「はて」と首をかしげた。 「え、普通にヴァルキリーたちの仕業じゃないのか? ヴァルキリーたちはヴァルハラをどうにかしたがってるから、それで邪魔な俺たちを消そうとしたんだろ?」 「その理論には無理があるんじゃないかな。だってヴァルキリーたちは、私たちに透ノ国の管理を押し付けたんだよ? 私たちがいなくなったら、管理する人もいなくなっちゃうじゃないか」 「あっ……そ、それもそうか……」 「それに邪魔な戦士を消すつもりなら、普通はミューやランゴバルトを先に消すよね。特にミューは一番の障害になるだろうから、私たちより先に始末しようとするはずだよ」 「う、うん……。それはわかった、が……だとすると……」  犯人がヴァルキリーたちではないのなら、他に誰がいるのだろう。  ――俺が知ってる神様なんて、数えるくらいしかいないからな……。  現在生きているのはオーディン、バルドル、ホズ、あとは無数のヴァルキリーくらいか。  これだけではとてもじゃないが、犯人を予想するのは不可能だ。というか、バルドルやホズが犯人なわけないから、その二人を消去すると黒幕は誰もいなくなってしまう。  うーん……と兄と一緒に頭を捻っていると、メリナが痺れを切らしたように口を尖らせた。

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