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第2095話

「でも、ぜんぜんわからないよりマシよね? まあ、メリナとあそんでくれないなら、おしえてあげないけどー」  わざとらしくアカンベーをしてくるメリナ。  さすがに憎たらしくなってきて、アクセルはぴくりとこめかみを痙攣させた。  ――言っておくけど、俺は兄上の身体を勝手に乗っ取ったこと、許したわけじゃないからな!  今思い出しても腹立たしい。メリナが兄の身体を乗っ取らなければ、兄を斬り刻む必要もなかったのに。 「兄上、メリナの言うことなんて聞く必要ないよ。聞いたところで黒幕を絞り込めるわけじゃないんだから。聞くだけ無駄だって」 「うーん……でもヒントなしだと、怪しい者をピックアップすることもできないよ。神様は数え切れないほどいるんだし」 「だからって俺は反対だぞ。また兄上が乗っ取られるなんて我慢できない」 「…………」 「そうだ、これもバルドル様に聞いてみればいいんじゃないか? 今まで空間を切り取ったのは誰がいますかって……それならメリナは必要ない」 「……どうかな。私はバルドル様もだいぶ怪しいと思ってるよ」 「えっ……?」  急にそんなことを言われ、さすがにショックを受けた。  アクセルは動揺して兄に聞き返した。 「な、何で? バルドル様は今までずっと親切にしてくれていたじゃないか。そんな彼が俺たちを殺そうとするわけないだろ」 「うん、まあそうなんだけど……状況的にやってもおかしくないんだよ。どこかで事情が変わって、仕方なく私たちを始末する方向に舵を切った可能性もあるじゃない」 「ちょっ、さすがにそれはひどくないか? 証拠もないのにバルドル様を疑うのは……」 「でも、何かというとバルドル様を頼ってきたせいで、私たちの状況はバルドル様に筒抜けなんだよ。さすがにカメを泊めたことは知らなかったみたいだけど、今のヴァルハラがかなり荒れていることは知られている。神々の事情なんて私たちには想像できないけどね、可能性のひとつとして考えておいた方がいいんじゃないかな」 「そんな……」

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