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第2096話
「こういう時はね、感情でフィルターをかけちゃいけないんだよ。疑いたくなくても一度『怪しいな』と思ってみて、違ったら『ああ、よかった』でいい。とにかく今は情報が少なすぎて、何をするにも後手に回ってしまうからね。せめてこの先何が起きそうか、黒幕は誰なのか、その黒幕は何を考えているのか……そういうことを先に突き止めないといけないんだ」
「…………」
「わかった? お返事は?」
「……兄上の考えは理解した……けど、だからといってまたメリナに兄上の身体を貸すのは嫌だぞ」
「ありゃ、お前の問題はそこなのかい?」
兄が目を丸くしたので、アクセルは語気を強めて答えた。
「当たり前じゃないか。兄上以外の人が兄上の姿かたちで動き回るなんて、俺は絶対に御免だ。俺の兄上は目の前のあなただけ、世界でたった一人しかいないんだよ。それを乗っ取られたりなんかしたら、後先考えずにまた斬り刻んでしまう」
「はは、そうか。お前の気持ちはわかるけど、この状況で斬り刻まれるのはさすがにマズいなぁ」
笑い事じゃないんだが、と思っていると、兄は驚くべきことを言い出した。
「じゃあ、今度はお前がメリナちゃんに身体を貸してみるかい?」
「…………は?」
「大丈夫、私はいきなりお前を斬り刻んだりしないからさ。中身はメリナちゃんでも身体はお前だし……特別念入りに可愛がってあげるよ」
「え!? ちょ、ちょっと待ってくれ。何言ってるんだ兄上?」
「だってメリナちゃんは大人の遊びをご所望なんでしょ? それを叶えてあげないと、怪しい神様を教えてくれないんでしょ? そしたら上手いこと付き合ってあげるしかないじゃない」
「はあぁ!? 兄上は中身が俺じゃなくても構わないっていうのか!?」
思わず悲鳴のような声で叫んでしまう。
さすがにその台詞は聞き捨てならなかった。そんなのまるで「こちらの身体だけが目当てです」と言っているみたいじゃないか。いくら兄でも今の発言は許せない。
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